第46話 僕は悶々とする
僕達が乗る車は、道の駅を出て十分ほどで別荘に着いた。別荘はログハウスのようで日本人の感性に合いそうだ。外にはベンチがあり、別荘の裏手には海が見える。僕達はそれぞれが荷物を持って中に入ると、コンロがあり、中央にテーブルがあり、上を見ると吹き抜けで天窓が見える。そして、吹き抜けを見渡すように部屋がいくつか見える。風呂は露天風呂で二階のバルコニーから行けるらしい。しかもサウナが備え付けてある。トイレは一階と二階の両方にある。これなら急に用を足したくなっても誰かが入ってるって可能性も少なそうだ。
「じゃあ、部屋分けでもしようかしら。二階に宿泊用に四部屋あるから、ちょうど八人だし二人ずつに分けようと思うんだけど・・・・・・明日香と翔琉君ちょっと来てくれない」
秋穂さんが手招きしてくる。その隣で母さんがほくそ笑んでいる。何か嫌な予感がしてあまり行きたくないが、明日香が母さん達のところに行ってしまったので仕方なく行った。
「な、何ですか?」
僕が警戒心を隠さないで近づくと、母さんたちが一樹達に見えない様に僕と明日香の肩に手を置いて引き寄せると、内緒話するように小さな声で言った。
「あなたたちに渡す物があるわ。これよ」
秋穂さんがポーチから取り出したものを僕は受け取り、明日香と見ていると段々と顔が紅くなっていくのが分かった。それもそのはずだ。秋穂さんが渡してきたのはコンドームだったんだから。
「わ、わ・・・・・・」
明日香は壊れたロボットの様に口をワタワタさせていた。
「あなたたち持ってないでしょう。あなたたち二人を同室にするから今夜やることやっちゃいなさい。私たちが許すから」
「あんたら、それでも親か!!」
思わず大声で突っ込んでしまった。
「翔琉、こんなチャンスないわよ。親がいいって言ってるんだから。それとも何。明日香さんとそういうことしたくないわけ?」
「し、したいに決まってるだろ! だけどこういうのには順序っていうものが・・・・・・」
母さんに挑発されるように勢いで答えてしまったが、自分が何を発言したが気づいた時にはもう遅かった。隣にいた明日香の顔がこれでもかと
その様子を見て、葉月たちが僕達に近づいてきたが直ぐに止まってしまった。しかもみんなの視線が僕の手に集中してるような・・・・・・
僕は自分の手を見るとそこには秋穂さんに渡されたコンドームが・・・・・・
「こ、これは違うんだ」
僕はすぐに弁明しようとしたがみんな聞く耳を持たない。
「お兄、流石にそれは」
「私もどうかと思いますお兄さん」
「翔琉も男だから仕方ないよね。泊りってなるとそういう気分になるのかな」
葉月とひよりちゃんにドン引きされ、加奈には同情される。そんなみんなの後ろで一樹がニヤニヤしている。何かその顔が腹に立つ。僕は、この場をどうにかしてくれと母さんたちに視線を送ったが目をそらされた。しかも今までのがなかったように秋穂さんはあっさりと部屋割りを決める。
「部屋割りは、ひよりと葉月ちゃん。加奈ちゃんは明日香ね。一樹君は翔琉君と。そして私は明美と同室ね。学生の時以来だから楽しみだわ」
「私もよ」
みんな荷物をもってそれぞれの部屋に向かった。その場に残った僕は一樹に肩をポンッとされて、促されるように部屋に向かった。
その日は、夕食までそれぞれ夏休みの宿題や勉強を教え合って過ごしたが、全く身に入らなかった。たびたび明日香と視線が合うと恥ずかしそうに目をそらされて、そのたびに葉月たちから白い目で見られ、その様子を見て、一樹と加奈は腹を抱えて笑っている。他人事だと思って・・・・・・
そして、夕食はカレーだったが明日香のことが気になって味がしなかった。しかも、食べ終わると直ぐに部屋に行ってしまってその日は明日香とまともに話すことができなかった。そのせいか、この日は良く寝れなかった。
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