第45話 道の駅での買い物

 僕達が乗っている車は、アクアラインを抜け木更津に入ると一般道に降りた。


「別荘に行く前にちょっと買い物していくわね」


 明美さんがそういうと高速インター近くの道の駅に寄った。

 外に出るとその場所はとても広く、海も近いせいか風が心地よい。

 どこの道の駅に来たのか正面の入り口を見ると、道の駅木更津 うまくたの里と書いてある。この場所はテレビで紹介してるのを何回か見たことがある。いつか来てみたいと思ってたけどこんなにすぐに来れるとは思わなかった。


「ここってテレビでやってるところでしょう。一回来てみたかったんだよね」

「加奈ちゃんも。私も来てみたかったんだ~」


 加奈と葉月も同じことを思ってるような会話をしている。


「ここってテレビに映るの?」

「お姉ちゃんはニュース見ないからな~。テレビつけたらアニメしか見ないもんね」

「ちょっとひより、声が大きい」


 焦ったように明日香がひよりに詰め寄りながら僕の方をチラチラ見てくる。何か言い争ってたようだが、ちょうど近くに停まったバイクのエンジン音で話してる内容がよく聞き取れなかった。僕は、とりあえず手を振ってみる。明日香はその様子を見てホッとしたように胸を撫で下ろしている。僕は怪訝そうに首をかしげる。明日香に何を言いたかったのか聞こうとしたら一樹に「行こうぜ」と腕を引っ張られ店内に連れていかれた。


 一方、明日香は――


 店内に入っていく翔琉達を見送ると、ほっと息を吐く。


「お姉ちゃん、何を気にしてるの?」

「お兄はオタクだから彼女がアニメ好きなら喜んでくれるんじゃないかなあ」


 ひよりと葉月ちゃんが何を今更っていう感じの呆れた視線を送ってくる。


「違うの。私の趣味はコスプレでその恰好を見られるのが恥ずかしいの」


 私がコスプレした姿を翔琉君に見られたらと思うと、想像するだけで顔から火が出るほど恥ずかしい。


「普段胸元が見えてるくらい制服を着づくしてるのに今更」


 加奈ちゃんのツッコミに私はまじめなトーンで言った。


「学校の制服とコスプレを一緒にしないでくれる」

「・・・・・・あ、はい」


 加奈ちゃんが若干引いた眼をしている。


「お姉ちゃん、普段コスプレの撮影会でいろんな人に囲まれてるのにお兄さんに見られることはダメなの?」

「あれは不特定多数の赤の他人だからいいの」

「コスプレって撮影会なんかあるんですか?」

「その時の撮ったやつあるよ」


 ひよりがその時の写真をスマホに出して葉月ちゃんに見せる。


「すご!? ものすごい人に囲まれてる! これが明日香さん。とってもきれい。まるで二次元のキャラクターが三次元に飛び出してきたみたい」


 私は葉月ちゃんの称賛の嵐に恥ずかしくていたたまれなくなる。


「翔琉はコスプレも好きなの?」


 加奈ちゃんが葉月ちゃんに聞いた。

 葉月ちゃんは顎に手を当て、考える素振りを見せる。


「・・・・・・どうなんでしょう。お兄、コスプレには詳しくないと思うけど、彼女が自分の好きなキャラクターの衣装を着て出てきたら喜ぶと思いますよ。――たぶん・・・・・・」


 葉月ちゃんはちょっと自信なさげに言った。


「ま、翔琉なら喜ぶと思うよ。それにアニメもコスプレもジャンルが似てるからあっけなくバレるんじゃないかな。それに明日香は抜けてるところあるし」

「私抜けてないよ」

「本人に自覚なしか~」


 そんなことを言って加奈たちも道の駅の建物の中に入っていった。

 一人残された私は、わたしねけてるのかな~と自問自答していた。




 一樹に引きずり込まれる形で道の駅の中に入った僕は適当に眺めながら探索していた。

 農産物直売所を見ていたら隅の方に花火セットを発見した。


「お、花火あるじゃないか。やっぱ夏と言えばこれだよな。一個買っとくか」


 一樹が花火を手に取る。一セットじゃ直ぐになくなりそうだ。僕も買おうと中身が違う花火セットを一個とった。


「僕も買うよ」


 僕と一樹はそれぞれ花火セットを買ったところで一樹は加奈に呼ばれて何処かに行ってしまった。一人になった僕は店内を適当に歩く。千葉県だからか店内に落花生で作られたものが目立つ。店内を歩くとピーナツのオブジェが入ったUFOキャッチャーを発見した。暇潰しにやって見ると、すんなり取れた。落ちたオブジェをとろうとしてなかなか取れない。どうしたものかと思っていたら注意書きを発見した。そこには、落花生にちなんだ商品(500円相当)と交換するから店員を呼ぶように書かれている。ちなみにオブジェは取りだせないらしい。僕は、店員を呼んで交換したら、落花生のクッキーを貰った。後でみんなで食べるのにちょうど良さそうだ。

 次にガチャガチャがあったので金を入れて回した。出てきたカプセルを開けると中から一等と書かれた紙が出てきた。店員に渡したら、ピーナッツギフトセットを貰った。今日はやたら運がいいようだ。それとも観光のために比較的当たりが出るようになってるんだろうか。もし、そうじゃなかったら自分の運を使い切りそうで何だか怖い。

 さらにぶらぶらすると、ピーナツの量り売りコーナーを発見した。

 そこには、ココア、イチゴ、ミルク、チーズ、黒ゴマ、抹茶、きな粉などの味付けされた落花生が売られていた。せっかくだからいろんな味を専用カップに詰めていった。色々入れすぎて欲張りすぎたかなーと思ったけど六百円ぐらいで済んだ。

 早速食べようと外に出ると、ちょうどトイレから出てきた明日香と出会った。


「うまそうな落花生あったんだけど一緒に食べない」

「本当に美味そうだけどいいの。それ食べたかったんでしょう?」

「そうなんだけど、欲張っていっぱい買いすぎたから食べるの手伝ってくれたらうれしいかな」

「そういうことなら」


 僕と明日香はみんなが出てくるまで落花生を食べていた。

 それから数分後、みんな戻ってきたところで車に乗り込み、別荘に向かうのだった。

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