第31話 僕は両手に花を満喫する
僕と葉月が明日香たちの元に戻ると、ひよりが半泣きだった。僕は見なかったようにして明日香の前にアイスコーヒーを置く。
「はい、アイスコーヒー。一応ミルクとガムシロップ、どれぐらいいるか分からなかったから三個ずつ持ってきたよ。それとストローが無くなってて店員に聞いたら代替えストローを貰ってきた」
「ありがとう。最近プラスチックごみ問題でプラスチック製のストローを廃止いてるらしいわね」
最近はプラスチック製のストローがない代わりにトウモロコシが原料の自然分解される植物由来のストローや雑貨店にはマイスプーンならぬマイストローがあるとか。
「明日香さん、物知りですね」
葉月がドリンクをストローでかき混ぜながら感心している。
「明日香は学年一位の秀才だからな」
「えっ、そうなの!? 今度勉強教えてもらっってもいいですか?」
「私でよければいいわよ」
「ありがとうございます」
明日香はミルクとガムシロップを二個ずつ入れかき混ぜると一口飲む。
「それじゃあ、私はお兄さんに教えてもらおうかなー」
ひよりちゃんがそう言いながら僕の隣に座り、右腕に抱き着いてくる。その拍子にひよりちゃんの豊満な胸の感触が直に伝わってくる。
「ひ、ひよりちゃん。ちょっと離れて。胸が当たってるから」
「お兄さんならいいですよ。なら触ってみますか?」
ひよりちゃんが両腕で胸を持ち上げるように強調してくる。
「えっ、あの・・・・・・」
「アハハハハッ! 冗談ですってば! 顔真っ赤ですよ」
カンッ!!!
明日香がコップを叩きつけるように置くとひよりちゃんを睨みつける。
「いい加減にしなさいよ。ひより! 翔琉君から離れなさい!」
「だから冗談だって。それとも何? お姉ちゃんはこういうことしたくてもできないのもんねー」
ひよりちゃんの胸の谷間に僕の腕が沈んでいく。
「私、買いたいものがあったからちょっと行くね」
「お、おい! 葉月!」
身の危険を感じたのか葉月が店を出て行ってしまった。我が妹ながら、身の危険を感じる能力が高い。だけど、出来ればこの状況をどうにかしてから行ってもらいたかった。
二人は葉月が居なくなったのを気づかないぐらいデッドヒートしている。
「・・・・・・私にだって出来るもん」
もんって普段と違って子供みたいで可愛い。これがギャップ萌えってやつか。
明日香がさっきまで葉月が座ってたとこに来るとひよりに負けじと僕の反対の腕に抱き着く。
「ちょ、明日香」
「翔琉君は黙ってて」
「――はい」
明日香の胸が僕の腕に当たってることに気付いてないだろうな。気づいてるぐらい積極的なら未だに手をつなぐだけしかできてないことないもんな。
僕は、しばらくこの機会は訪れないだろうから十分堪能しておくことにしよう。
例えるならひよりちゃんの胸は中学生らしからぬ爆乳で明日香の胸は形のいい美乳っていったところか。ひよりちゃんに比べればあれだけど明日香も十分胸がある。知らないけど女子の平均以上はあるんじゃなかろうか。それにしても両サイドから美少女に胸を押し付けられてるこの状況、悪くないな。
「お兄さん、私の胸の感触いいでしょう」
「私の方がいいよね!」
二人ともしがみつく腕に力を入れる。ますます胸の感触が。僕は明日、死ぬのだろうか。それぐらいのラッキーなことがたてつづけに押し寄せてきてるようだ。
「えーと・・・・・・」
僕が言い淀んでると、ウエイトレスさんが僕達の席にやってきた。
「あの、お客様」
「「今いいところだから後にして」」
さすがは姉妹。意気ぴったり。って感心してる場合じゃない。二人ともウエイトレスさんの雰囲気が険しくなっていることに気付いてない。
「ちょっといいですか?」
「「だから後にして・・・・・・って」」
二人ともウエイトレスさんの表情に気付いたのか怖気づいている。顔は笑ってるのに表情金がピキピキ痙攣している。背後に般若がいるようなおぞましい気配がする。
「お客様、ここはそういう店じゃないんで出て行ってくれます。(高校生のくせに彼氏がいない私への当て付けか。こちとら好きで彼氏がいないわけじゃないんだよ)」
「持てない俺たちに当て付けか」
「あんな可愛い顔してピッチだなんて」
「女二人に囲まれてハーレム気分か」
周りの席に座っている客からもヒソヒソと声が聞こえる。居たたまれなくなった僕達は、
「「「すいませんでしたー!!!」」」
と、店を飛び出した。
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