第30話 僕はできた妹がいることに今更気付かされた。
僕は明日香に葉月とひよりを加えて、近くのファミレスに入った。席に着くと注文を取りに来たウエイトレスにドリンクバーとそれぞれにちょっとした軽食を頼んだ。値段はリーズナブルで
夏休みに入ったらバイトでも始めようかな。デートでお金がかかるだろうし明日香に会う時間が減るかもしれないけど考えてみよう。
僕はドリンクバーを入れに行くべく立ち上がった。
「明日香の分も取ってくるよ。何がいい?」
「じゃぁアイスコーヒーをお願い」
「分かった」
僕は明日香の注文を聞いてドリンクバーの場所に向かった。
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翔琉君が席を立って離れると同時に隣に座っている妹のひよりがこっちを見てニヤニヤしているのに気が付いた。
「何?」
「いや、立派に彼女やってるなあって思っただけ。しかも名前で呼び合ってるなんてビックリだよ。ねえ、葉月」
「そうだね。あのお兄にこんな美人な彼女ができるなんてビックリだよ。でもよかった。昔ひどい失恋したみたいで彼女は作らないって言ってたから」
「そういえば昔から俺は二次元に生きるって言ってたもんね。私の胸にも無反応だったからてっきり三次元の女には興味ないのかと思ったけどまさかお姉ちゃんと付き合うとは思ってなかったよ」
ひよりは自分の胸をよせて強調させるようにしている。
私はひよりの肩に手を置いて詰め寄る。
「痛いってどうしたの? おねえちゃん」
「今聞きづてならないような事を聞いたと思うんだけど、翔琉君をこの胸を駆使して誘惑したの?」
「誘惑っていうかお兄ちゃんは他の男の人と違って私をエッチな目で見てこないし、それにお兄ちゃんになら何されてもいいかなぁって計算もなかったわけじゃないけど・・・・・・」
私はひよりの肩においてる手の力をさらに込める。
「痛いってどこにそんな力が――」
「ねぇ、ひより。これからは翔琉君を誘惑するの遠慮してね」
「それは・・・・・・どうかな・・・・・・」
「今度誘惑したらどうなると思う?」
「お姉ちゃん、顔が怖いって。マジで。助けて。葉月」
「えーと私も飲み物取ってこよーと」
葉月ちゃんもドリンクバーを取りに行ってしまった。そんなに私の顔が怖いかったのかな。だけどこれで姉妹水入らずで話ができるというもの。私の物に手を出したらどうなるかこの妹に分からせる必要がある。
「さてと、二人が戻るまで姉妹水入らずで話をしようじゃない」
「笑顔が怖いんだけど・・・・・・二人とも早く戻ってきてー!!」
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僕は明日香の分のアイスコーヒーを入れてると葉月が来た。
「何か明日香とひよりちゃん、揉めてるような気がするけどなんかあったのか?」
「全然大したことないよ。お兄が気にすることでもないし」
「そうか」
葉月が自分の飲み物を用意しながら聞いてくる。
「それにしてもお兄に本当に彼女が出来たなんて信じられないよ。しかもあんな美人を。どんな手品を使ったの?」
「特に何もしてないよ。第一明日香から告白してきたんだし」
「えっ!?」
あまりの驚きぶりに葉月の手からコップが滑り落ちる。
「あぶねっ!?」
僕は何とかコップを掴むことに成功した。そんなに驚くことか? それにしても落として割らなくてよかった。そうなったら次からこのファミレスに来づらくなるところだった。自分の反射神経を
「お前、気をつけろよ」
「ごめん・・・・・・って、そんなことより明日香さんから告白してきたの! お兄に!!」
「そんなに驚くことか」
僕はそんなに告白されそうな感じに見えないのか。確かに今までは一樹の陰に隠れて存在感がなかったかもしれない。妹にもそう思われてたんだとすると少し前の僕ならショックだけど今は違う。明日香はそんな僕に告白してくれたんだ。たとえそれが間違いから始まったとしても。今は僕のことが好きなはずだから。今までの態度でそれぐらいわかる。もし、これが演技だったらもう誰も信用できない。
ポロ~
そんな時、葉月の目から涙が一粒垂れてきた。
「葉月、何で泣いてるんだ?」
僕は何か泣かせることを言ってしまったんだろうか。もしそうなら妹を泣かせるなんて最低だ。それともどこか怪我してるんだろうか。僕はあーでもない、こうでもないと考えてるうちに葉月は今気づいたように涙をぬぐった。
「お兄にも彼女が出来たと思ったら安心して」
「お前、相変わらずブラコンだな」
「お兄だってシスコンじゃん」
「シスコンで悪いか」
「ついに認めたね。さてと、明日香さんにお兄との馴れ初めでも聞こうかな」
「待て! 葉月、何を聞くつもりだ」
明日香たちがいる席に戻る葉月を追いかけながら、僕はこんなにできた兄想いの妹に恵まれていたことを実感するのだった。
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