第27話 翔琉と明日香、水着を買いに行く
あれから、しばらくは一樹と加奈の噂でもちきりだったが、テスト期間中と言うだけあってみんな勉強に集中した。進学校なだけあって赤点を取ると夏休みを返上して毎日学校で勉強しなければならない。誰だって休みが無くなってまで学校で勉強してせっかくの青春を棒に振りたくはないだろう。ほとんどの学生は学年の美少女ベストスリーに入る明日香に続いて加奈まで付き合ってる人がいた。しかもその相手がイケメンの一樹だったことで怒りをぶつけるように勉強をしてるようだが・・・・・・
僕は明日香と付き合ってることで存在感が現れたけど一樹達の話で上書きされて今では親しいクラスメート以外ではモブAとしか認識されてないだろう。所詮陰キャってことか。
それから、僕達は無事に期末テストを乗り越えることができた。今回は平均点が全体的に高かったが、明日香と一緒に勉強したおかげか、学年で五十位に入ることができた。一学年二百四十人だから上々だろう。そして、明日香は一位だ。僕の彼女は完璧だ。こういうのを才色兼備って言うんだろうな。
因みに加奈は十二位で一樹は三十三位だった。二人とも僕より順位が上だ。噂のせいで心ここにあらずと言った感じで勉強に身が入ってない感じだったのに解せぬ。
そして、その日の放課後――
帰り支度をしていると明日香が近づいてきた。
「帰りに寄り道していい?」
僕には断る理由もないので頷いた。
「よかった。じゃ行こう!」
僕は明日香に手を引っ張られる形で学校を後にした。
駅まで歩いて電車に乗るのかと思ったら改札前を過ぎ去った。
「電車に乗ってどっか行くんじゃないの?」
「今日は乗らないよ。それにもうそんな必要ないでしょう」
「それもそうだけど・・・・・・」
僕達は付き合いたての頃、学校からなるべく離れた場所でデートをしていた。学校近くだとどうしても同じ学校に通ってる人にあう可能性が高い。明日香と付き合ってることが公になったら次の日から学校に通えない。そんな思いからなるべく人目をつかないところを選んでいたが学校中にバレた今となってはそんな必要がないという訳だ。・・・・・・良く生きてたな。僕・・・・・・。
「ここに来たかったんだよね」
明日香に連れられた場所はさいたま新都心駅前にある商業施設コクーンシティだった。
学校から近いため陽キャラの聖地として僕達みたいな陰キャラは一人でうろついてるのが恥ずかしくて近づけなかったのに遂にこの場所に来れるとは・・・・・・
「おいていくよ」
感動に打ち震えてた僕は慌てて明日香の後を追う。
「どこ行くの。映画でも見るの?」
「何? 見たいの?」
「そういう訳ではないけど、デートなら映画鑑賞かなっと思って」
「それもいいけど今日は普通に買い物」
「何買うの?」
「水着よ。それでどうせなら翔琉君の好みがいいかなっと思ったんだよね」
「水着? 水泳の授業は始まってるし後一瞬間ぐらいで夏休みだけど今買っても遅いよ」
明日香が呆れたようにため息を吐く。僕は何かおかしいことを言っただろうか?
「あのね、今更だけど夏休みに入ったら海水浴にでも行かない?」
そうか、彼女が出来たら海水浴に行くのか。まさか、ラブコメでお約束の展開があるのでは・・・・・・
明日香の水着が波にさらわれて僕が拾いに行ったり、ナンパされてるところに僕がさっそうと現れて助けたりと想像するだけでニヤけてしまう。
「――くん。翔琉君」
「――は、はい!」
「どうしたの。何か考え事?」
「い、いや、何でもないよ」
言えない。明日香の水着姿を想像してあられもないことになってたなんて・・・・・・
僕は話題を変えるように言った。
「そういえばさっきからいいにおいがするね」
「この匂いはクレープじゃないかしら。ほらあそこ」
明日香に言われた方を見ると広場の一角に長蛇の列ができてるキッチンカーを発見した。確かに多くの女子高生が手にクレープを持っていた。
「翔琉君はクレープ食べたことある?」
「どうだろう。幼稚園ぐらいの時食べたことあると思うけどそれぐらいかな」
「なら、後で食べない?」
「うん、いいよ。何だかデートっぽいし」
「そうと決まればさっさと水着買いに行くわよ!」
僕達はコクーン3にあるスポーツ用品店に向かうのだった。
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