第26話 一樹の人気ぶりは芸能人すら凌駕する。
次の日の朝、僕はいつも通りに明日香と待ち合わせをして学校に登校した。教室に入った僕達に気付いたのか加奈が迫ってきた。少し涙目だ。それを見て気まずそうに明日香が僕の背中に隠れる。
何かあったのだろうか? それにしても今日も僕の彼女は可愛いなあ!!
「明日香! 昨日の
加奈のあまりの剣幕に明日香が縮こまっている。二人の間で何があったか分からないが、ここは彼氏である僕が人肌脱ぐしかない。
「あの、加奈。少し落ち着いて」
「翔琉は黙ってて!」
「・・・・・・はい」
僕には加奈を止めれない。不甲斐無い彼氏を許してくれ。
明日香が恐る恐る答える。
「あ、あのね、昨日は加奈ちゃんと桜井君が付き合いだしたことで興奮してて、しかも二人がキスを済ませたのを聞いた途端、私はまだ翔琉君とキスを済ませてないのに二人はもうやったんだと思ったらついあんな言葉を言ってしまって気づいたらスマホも切っちゃってたんだよね。もう一度かける勇気もなくて」
「えっ!? キスしたの!」
僕は思わず叫んでしまった。加奈の顔も真っ赤だ。そして、アッと思った時には遅かった。もうクラスにはほとんどの生徒が登校している。僕の声が大きかったことでみんなにも聞こえてしまったようだ。その証拠に、「そういえば昨日二人がキスをしてるのを見ったって聞いたよね」「吹奏楽部の人から聞いた」「噂じゃなくて本当だったんだ」「この学校で一番のビックカップル誕生じゃないか。学生新聞のネタは決まりだな」
と、次々に声が上がっている。一樹がまだ来てないことだけが不幸中の幸いか。
「なぁ、学校に着た途端に周りから変な目で見られたり、コソコソ何か話してるのを見かけるんだけど何か知ってるか?」
一樹は今来たところなのかよく理解してないようだ。
僕が答える前に加奈が、
「し、知らない!」
と、叫んでその場と言うより一樹と顔を合わすのが恥ずかしいというばかりに自分の席に逃げていった。
「何だ。あいつ?」
キンコーン、カンコーン・・・・・・
予鈴が鳴ったことで僕達も自分の席に戻っていった。ただ一樹だけは訳も分からず近い席の人たちから温かい目で暫く見られるという何とも言えない気持ちに耐える時間がしばらく続いた。
因みに後で人づてに聞いたことだが、他のクラスでは一樹に彼女が出来たという噂が広がり、しかも目撃者も多数いたことで真実味を帯び、学校を早退する人が続出した。主に女子生徒が――。
いや、芸能人かよ!
僕のツッコミが寂しく響いた。
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