第15話 妹に信じてもらえなくてつらい

 僕はいつもより早く目が覚めた。今日、明日香と一緒に学校に行くのが楽しみで仕方なかった。まるで遠足に行く前の小学生のような気分だ。時計を見るとまだ朝の六時を回ったところだ。二度寝するにも中途半端だし、明日香との初めて待ち合わせしてる日だ。遅刻するわけにはいかないと早めに用意することにした。制服に着替え、洗面台で身支度を整えると、食卓に向かうと母親が味噌汁を作ってるところだった。


「どうしたの。今日は珍しく早起きね」

「うん、たまにはね」

「もうちょっとで朝ごはんできるから待ってなさい」

「わかった」


 僕は料理ができるまでの間、ソファーに乗っ転がりテレビをつけて適当にチャンネルを回す。

 ちなみに父親はトレジャーハンターで世界各地を飛び回ってめったに家に帰ってこない。たまに外国から訳の分からないガラクタが送られたりしてるから元気にやってるだろう。


「ふぁぁぁぁぁぁぁっ・・・・・・おはよう、お母さん」


 寝むそうにあくびしながら妹の葉月が起きてきた。


「おはよう、葉月。まずは顔、洗ってきなさい」


 葉月は目元をこすりながら洗面台に向かった。

 しばらくすると顔を洗って目が覚めたのか葉月は「あれ、お兄、今日は珍しく早いね」と今更僕に気付いたのかそんなことを言ってくる。


「たまにはそう言うこともある」

「ふーん」

「二人とも―、朝ごはんできたわよ」

「「はーい!」」


 僕と葉月はテーブルに着くと食事を始める。今日のメニューは白米に味噌汁、卵焼きには大根おろしが添えられている。僕は味のりを持ってきてご飯に巻いていると、

葉月が「私にもちょうだい」と言うから味のりが入っている袋を渡す。


「お兄が今日早いのって、彼女と待ち合わせでもしてるの?」

「・・・・・・だったら何だ」

「いや、こっそり見てみようかなーと思って」

「お前、自転車通学だろ」

「いいじゃん。妹の私が本当にお兄にふさわしいかどうか見極めてあげる。そのためなら一日ぐらい学校をさぼっても――」

「――おい、受験生。内申点に響くぞ」

「大丈夫。これでも私は優等生で生徒会長だから」


 葉月は偉そうに胸を張る。


「生徒の模範たる生徒会長ともあろうものが私情で学校さぼっちゃだめだろう」


 僕はこの妹様は黙ってたら可愛いのにどうして、なんか残念美少女みたいんだろと頭を抱えた。


「葉月、学校にはちゃんと行きなさいよ」

「はーい」


 母親に言われて素直に返事する葉月だった。どうせある程度は冗談だろうしな。


 食事を再開すると、


「写真はないの?」


と、葉月が聞いてくる。


「お前、まだあきらめてなかったのか」

「いいじゃん。見せてよ」

「あら、私も見てみたいわ」


 母よ。お前もか。


 二人とも、ホレホレというように詰め寄ってくる。


「――ない」

「何が?」

「だから写真がないの!」


 僕の言葉を聞いて葉月の目元から涙がホロリ。


「な、なんかごめん」


 涙をぬぐいながら葉月が誤ってくる。一体どうした?


「彼女って空想上の彼女だったのね。でも気にしないで。お兄には妹の私がいるから」


 葉月が僕の肩に手を置いて勝手に納得している。


「い、いや、違っ――」

「みなまで言わなくていいから。そこまでして彼女が欲しかったんだね」


 この分かってるってしたり顔がなんかむかつく。


「だ・か・ら、本当に彼女がいるんだって。そこまで言うなら写真撮ってやる!」


 この時、僕の今日の目標は決まった。明日香と写真を撮る!


 そして、僕は急いで朝ご飯を食べると、待ち合わせに遅れない様に早めに家を出るのだった。

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