第13話 橘さんの想い。 その1
私は家に帰って制服から私服に着替えると、はしたないと思いながらベッドにうつ伏せにダイブした。そのままスマホを取り出して今日登録したばかりの翔琉君の連絡先を表示する。
思い出すのは今朝のチンピラに絡まれた時だ。あの時、私は仲良く手を繋いでアイスを食べている女子小学生が歩いて駅に向かってるのを見た。仲睦ましい光景に私の気分も良くなる。
だが、この後その気分が最悪になる。その女子小学生のいる方向にガラの悪い男たちが歩いて行くのが見えた。何か嫌な予感がすると思ったら案の定、すれ違いざまにわざと当たるようにぶつかったのだ。そのせいでアイスは地面に落ち、女子小学生達は今にも泣きそうだった。しかも追い打ちをかけるように服が汚れただの、クリーニング代という単語が聞こえ、私は思わず女子小学生達を守るように割って入った。如何にもチンピラみたいな男たちに睨まれて、今にも逃げ出したい気持ちに襲われたが後ろで怯えている女子小学生達のためにも逃げるわけにはいかなかった。周りに多くの人がいたがどの人も見て見ぬふりで遠巻きに眺めているだけだった。その中には同じ学校の人もいたが、私と目が合うと視線を逸らしてそそくさと行ってしまう。
誰も私たちを助けてくれない。自分の力でどうにかするしかない。足もガタガタで今にも倒れそうだったが気丈に踏ん張った。そんな時、私の胸に手を伸ばしてきたチンピラの手を思わずはたいてしまった。それで逆上したチンピラの一人が私に殴りかかってきたのだ。咄嗟のことで体が硬直して動けない。次に来る痛さを想像して歯を食いしばって目をつむる。だが、いつまでたっても殴られない。恐る恐る目を開けるとそこには翔琉君が殴りかかってきたチンピラの拳を受け止めてる姿が。
私は助けてくれた嬉しさに思わず翔琉君に抱き着きたかった。どんだけ嬉しかったか伝えたかった。
だけど私のせいで傷つく翔琉君を見たくない。そう思った私は『星宮君。あなたまで巻き込まれる必要ないわ』と言って遠ざけようとした。だけどその直後に翔琉君が言った言葉は私の心を一瞬で撃ち抜いた。あの言葉、『僕は彼女の彼氏だ! これ以上彼女を傷つけるなら僕が相手だ!』今思い出すだけでも悶絶してベッドの上で足をバタバタさせてしまう。その後はナイフを取り出したチンピラを怯むことなく撃退した翔琉君。私にとってヒーローが現れた瞬間だった。今思えばこの瞬間私の心は落とされていたのだろう。
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