勝負にならない戦い
「――― まさか、キリハのお師匠があのディアだったとはねぇ。」
二人の戦いを見ながら、フールが感心したように呟いた。
「フールちゃん、知ってるの?」
口も挟めず見物人となっていたサーシャは、フールにそう訊ねる。
同じく見物人状態のカレンは、はらはらして二人に見入っているせいで、こちらの会話には気づいていないようだった。
フールはこくりと頷く。
「知ってるも何も、生ける伝説とまで言われてる剣の名士さ。特例で入軍した二十一歳の時に宮殿の大会を最年少で制覇、その後に前人未踏の三連覇を成し遂げて殿堂入りだもの。彼独自の剣技である
言いながら、フールはまたキリハたちに目を向ける。
「これじゃあ勝負にならないね。キリハが速すぎるよ。」
猪突猛進に攻撃を仕かけるルカを、キリハは涼しい顔で受け流している。
相手の攻撃を利用する流風剣は、攻めよりも受けを得意とする流儀。
ルカはキリハのリズムを崩そうと必死だが、あれはむしろ、キリハにとって有利な状況に飛び込んでいる自殺行為でしかない。
それを熟知しているはずの
全身を包むのに感触が掴めない空気のように敵の攻撃をかわし、時に巨大な竜巻のように敵を飲み込む。
まさに、流れる風の
ここ数年で生ける伝説とまで呼ばせた剣技を、ディアラントの他に使いこなす人物がいたとは。
「どうりで最初から、あの
納得したようなフールの独り言は、当然ながらキリハたちには届いていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます