【第7部】交錯する過去と現在

プロローグ

陶酔の声

「ああ…。ようやく会えるんだね……」

 


 壁一面に貼られた写真に、うっとりと頬ずりをする。



 ―――いつか、必ず手に入れてみせよう。



 とある日に衝撃を受け、そう決意して日々を過ごしてきた。



 しかし実際のところ、自分と彼には接点が全くない。

 急に近づいては、警戒されてしまうだろう。



 どうにか近づける機会を作ろうと模索したが、彼がいる場所は国で一番のセキュリティを誇っている。



 しかも、情報に関しては鉄壁レベルの驚異を持つ人物が居座っており、なかなか手を出せる状況ではなかった。



 しかし、それも含めて下準備が済んだ。

 小手調べに回した手紙も、誰の目に留まることもなく彼に届いたようだ。



 別に、彼に好意を抱いてもらう必要はないのだ。

 好意であれ恐怖であれ、彼の意識と行動を支配下に置ければこちらのもの。

 きっかけや過程など、なんでもいい。



 お前の望みに協力してやる、と。



 突然そんなやからが現れた時には半信半疑だったが、今はあの子を受け入れてよかったと思っている。



 おかげで、ありとあらゆる情報が手に入ったのだから。



 本当は今すぐにでも彼と相見あいまみえたいところだが、もう少し我慢しよう。

 じっくりと時間をかけた分、あの瞳は美しく輝いてくれるはずだから。





「ああ…。愛しい愛しい、私の宝。どうかその瞳を、絶望で綺麗に染めておくれ。」




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