エピローグ

不気味な笑み

「本当に、協力してくれるのかい?」



 彼は机から身を乗り出して問うた。



「ここまでの情報を出させといて、まだ疑うの?」



 対する少年は、無感動にそうとだけ告げる。



「い、いや…。そういうつもりではないんだ。」



 彼は慌てて頭を振る。



「君がこちらに協力する理由が分からなくてね。」

「理由? そんなの気にするの?」



 彼のコレクションを眺めていた少年は、気だるげにそちらを振り向く。



「ぼくはあいつが邪魔。お前はあいつをコレクションに加えたい。ただ、利害が一致してるってだけだけど? それ以上の理由って必要?」



 少年が訊ねると、彼は少し考えるような仕草を見せた後に微笑んだ。



「……確かに、私たちにそれ以上の関係は必要ないか。」

「分かったなら、早く動いた方がいいよ。」



 少年は告げる。



「ぼくは目からの情報ならいくらでも用意できるけど、人をってなると、それなりに準備が必要になる。使い捨ての駒は、そっちで用意してね。さっきも言ったけど、仕込むなら今から五日くらいが限界だよ。そうじゃないと、危ない人が帰ってきちゃうから。」



「分かっているさ。すぐに人を手配するとも。」



 彼は何度も頷いて、どこかに電話をかけ始めた。

 そんな彼を横目に見ていた少年は、ふとした拍子に彼のコレクションへと視線を戻す。



 さあ、こちらの方は準備ができた。

 あとはもう一つ、別の方向に種をこう。



 この二つの種から芽吹いたものが、どんな絶望の螺旋を作ってくれるのか。





「楽しみだな……ユアン。」





 ずっと無表情だった少年の唇が、不気味に弧を描く―――



◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆


 【第5部】はこれで完結となります。

 ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございました。



 【第6部】あらすじ



「いっておいで。私の可愛い子。」



 雨が続くこの頃。

 外に出ると、いつの間にかついてくる気配がある。



 時期を見計らって仕かけたキリハが捕まえたのは―――真っ白な髪に赤い両目の少年だった。



 何も語りたがらない少年の家を探すため、ルカの助言を受けたキリハは、とある人物に協力を仰ぐ。

 しかしそれがとんでもない闇をもたらすなんて、この時のキリハには知るよしもなかった。



「つまりその子は―――」



 衝撃の事実を聞き、少年にのめり込んでいくキリハ。

 そしてその少年の存在は、これまで息をひそめていたフールの心をも激しく揺り動かして―――



 因縁の二人が、ついに正面衝突!!



 どうぞ、【第6部】もよろしくお願いいたします!


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