【第6部】雨の少年と動き出す歴史

プロローグ

次なる一手

「じゃあ、そろそろ行ってくるね。」



 木から飛び降り、父に告げる。



 まだ、その時ではないからと。

 そう言われて、長い時間を待たされた。



 父が言うなら仕方ない。

 そんな風に納得していたけれど、本当はずっと心がもやもやとしていた。



 やろうと思えばいつでも動けるはずなのに、父は何を待っているのだろうと。

 ちょっとした不満が喉元をせり上がっては、何度もそれを飲み込んだ。



 そんな渇望の日々も、もう終わり。

 ようやく自分の出番がやってきた。

 やっと自分も、父の役に立てる。





 そして―――やっと、嫌いな人間たちに引導を渡してやれる。





「期待しているよ。」



 父は優しく、頬をすり寄せてくれる。

 そして、甘い囁きが頭に響いた。





「いっておいで。私の可愛い子。」




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