【第5部】襲来!海の向こうからのハプニング

プロローグ

いざ、出発!

「ノア様、本当に行くのですか!?」



 後ろで、補佐官たちがおろおろとしている。

 だが、そんな彼らの心の内など全く分かっていない風に、彼女はおおらかに笑うだけだった。



「当たり前だ! なんのために、この先一週間の仕事を片付けたと思っているのだ。」



 そう。

 自分はこのために、割と本気で努力してきた。



 ただでさえ暇がないスケジュールを数ヶ月かけて調整し、ちょうど半期の決算とこの先の財務調整も落ち着いたこの頃。



 やっと一週間の都合をつけられるタイミングができたのだ。

 この好機をみすみすのがすつもりなど、毛頭もない。



「違うんですよ。我々は、あなたがセレニアに行くことをお止めするつもりはなくてですね…。本気でセレニアに、ルーノを連れていく気なのかと訊いているのです。」



「むむ、だめか?」



「だめに決まっているではありませんか!! セレニアの国風は、お調べになったでしょう!?」



 そんな、今にも泡でも吹いて倒れそうな顔をしなくても……



 彼女は必死に言い募ってくる彼を見やり、大きく息を吐いた。



「よいではないか。ルーノがセレニアの民に危害を及ぼすことはないのだ。あの男が惚れ込むくらいなのだから、セレニアの女王もそんなに狭量ではないだろう。それに私は、そのセレニアの国風が気に入らんのだ。ちょうどいいから、それをぶち壊してやるとしよう。」



 どのみち、自分が決めたことを今さら覆す気はない。



 視野が狭いのは、あの国の連中なのだ。

 自分に振り回されて、少しは世界の広さを知るといい。



 補佐官たちが頭を抱えて、情けなくうなっている。

 それを空気のように無視し、彼女は仁王立ちで青空を見渡した。





「さあ、待っているがいい! 今度こそ、お前を手に入れてみせようではないか!!」





 彼女は、心底楽しそうに笑った。


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