第4章 自分の役目

陰で動き出す者たち

「ははは。やはり、人間は単純だな。本当に簡単に壊れてくれる。」



 深い森の中で、彼は上機嫌に笑った。



「父さん、ぼくは何もしなくていいの?」



 彼の傍に座っていた少年がそう訊ねる。



「ああ、大丈夫だ。今は都合よく、レティシアたちが人間どもを掻き回してくれているからね。あいつも、ユアンのせいで色々と苦い思いをしている身だ。今さら、人間側につくことはないだろう。放っておけば、彼らは勝手に争って滅ぶ。」



「………」



 少年は黙って視線を下へと向けた。

 その心境は、口で言わずとも態度が物語っている。



「大丈夫だ。」



 彼は少年に頭を預けた。



「可愛い私の子。お前はちゃんと、私の役に立っているよ。お前のおかげで、情報収集には困らないからね。」



 甘く。

 優しく。

 彼は少年に語りかける。



「だから今は、私たちが嫌いな人間たちが滅ぶのを、ゆっくりと見届けよう。こいつにも、そろそろ起きてもらわんとな。」



 囁くように告げると、それだけで彼の意図を察した少年が、地面に投げ捨ててあった小型ナイフを手に取った。



 そんな少年の行動を見つめながら、彼はくすくすと笑い声を漏らす。





「リュドルフリア、ユアン……お前たちが守りたかった世界なんて、私が壊してやろうとも。」




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