【第3部】夏の嵐は師匠と共に

プロローグ

故郷に降り立つ



「んー。久々だな、この空気も。」





 約九時間の空の旅。

 長いこと飛行機の中だったからか、外で吸う新鮮な空気がとても美味しく感じる。



 この景色を見るのも、約一年ぶりだ。



 本当は三ヶ月ほどで帰れるはずだったのに、後からついでで、やれあそこへ行けだのなんだのと……

 おかげで、帰国がこんなに遅くなってしまったではないか。



 ずっと座りっぱなしだった体をほぐしていると、胸ポケットに入れていた携帯電話が震えた。

 それを取り出して画面を確認すると、新着メールが一件。



 メールの本文を確認して、思わず笑みが込み上げてくる。



 帰国の途についてからというもの、自分が携帯電話を取り出せるタイミングで、こうしてちょうどよくメールが届く。

 忙しい身だというのに、仕事をしながらもこちらの動きをここまで正確に把握しているとは、なんとも真面目な彼女らしい。



 それとも、彼女が自分に会いたくて気にしてくれていると。

 そう自惚うぬぼれてもいいのだろうか。



「分かってるよ。早く帰るから。」



 胸が温まる心地にひたりながら、メール画面を愛しげになでた。


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