神託



 ――――――― 覚悟は、あるか?





 ………?



 どこからともなく、その声は響いてきた。

 とてもおごそかに響く低い声は威圧感に満ちていて、本能的な畏怖の念を感じさせる。



 ――― 覚悟は、あるか?



 声は再び訊いてくる。



 ――― 背負う覚悟が。守る覚悟が。全てを受け入れて裁きを下す覚悟が、お前にあるか?



 そんなことを、今さら問うのか?

 問われれば問われるほど、不快感と共に反感じみた感情が湧き上がってくる。



 戦いを背負う覚悟なら、とっくのとうに決めた。

 自分が守りたい人を守るためにここまで来たのだ。

 裁きとはなんのことか知らないが、ドラゴンたちを楽にすることが裁きを下すことに繋がるのなら、それも背負ってやろうではないか。



 本当は、誰のことも見捨てたくはないけども……



 そう思うと、自分の中が熱いもので満たされるような気がした。





 ――― では、手を伸ばせ。





 声が重々しく告げてくる。

 それはまるで、神聖な場で受ける託宣のよう。





 ――― 覚悟があるのならその手を伸ばし、剣を抜くがいい。我の意志の、代弁者たる資格を与えよう。





 ―――っ



 全身が熱い。

 熱くてたまらない。



 熱に浮かされた思考はまともに回らず、全部が真っ赤に染められていく。

 それでも、するべきことは分かっていた。



 覚悟があるのなら?



 上等だ。

 受けて立ってやる。



 感覚だけで手を伸ばし、ぐっと手を握る。





 そこには、確かな感触があって―――




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