付き合って!
包帯が取れ、後遺症の心配がないと判断されて安静命令が解除されるまでに、また一週間ばかりが経過した。
それから三日ほどは、狂ったように訓練に打ち込んでいたように思う。
何せ、こんな長い期間運動できなかったのは初めての経験で、かなりストレスが溜まっていたのだ。
その犠牲者になったミゲルたちには、心の中だけで謝っておくことにしておいた。
そして、その週の土曜日。
「うん……うん。じゃあ、また後で。」
携帯電話を切り、キリハは勢いよくベッドを飛び降りた。
ついでに脇に置いてあった上着を取り上げ、鼻歌を歌いながら部屋を出る。
廊下を進み階段を下りようとして、ふとバルコニーにルカたちが集まっているのを発見した。
「あれ、みんなどうしたの? せっかくの休みなのに。」
窓から顔を出して訊ねると、サーシャとカレンからは「おはよう。」という挨拶が、ルカからは煙たそうな顔が向けられた。
「調子が戻ったら戻ったで、うるさい奴だな。」
「ええぇ……じゃあ、どうしろってゆーの?」
毎度毎度の二人の会話に、サーシャとカレンがそれぞれ苦笑する。
「お前は、どっか行くのか?」
キリハが手に持つ上着に気づいたのか、ルカが特に興味もなさそうに、形だけの質問を投げてくる。
キリハはこくりと頷いて肯定。
「うん。みんなは?」
訊いてみると、ルカたちは互いに困った表情で顔を見合わせた。
「出かけるって言ってもな……」
「特に行くところもないしね。」
答えはこうだった。
これもいつもの光景だ。
中央区の人々と同じように、ルカたちも極力外へ出ようとはしない。
まあ外へ出たとしても周囲から嫌な視線を受けてしまうので、外へ出たくない気持ちも分かる気はするが。
「そっか……」
相づちを打ちながら、キリハの中にとある考えが浮かぶ。
「じゃあさ!」
キリハは三人を見回し、にかっと笑った。
「今日一日、俺に付き合って!」
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