第5話 どうも気になる…
長い長い道のりを自転車で無事帰り着いた俺はすぐさま生き物の世話を始めた。
蝶の幼虫に、オオクワガタ、ノコギリクワガタ、ハムスターやはり自分が飼っている生き物たちと一緒にいる時が一番落ち着く。これに静かな空間が追加されているときは特に最高だ。
しかし、どうも気になる。綿津見が急に俺にクラスの人間と仲良くなることを提案したのか。どうして俺じゃなきゃいけなかったのか。それに一番気になっていることは綿津見の表情だ。笑っているが笑っていないような、なにか隠しているような表情だった。まぁあくまでも俺が感じたことなのだが
「たっだいま~!」
あーあーうるさい姉さんが帰ってきてしまった。
「…」
「拓、おかえりは?」
「おかえり」
「ママは何時頃帰ってくるって言ってた?」
「9時過ぎごろには帰るらしい」
「いつもより早いね。拓、ご飯作っといて、着替えてくるから。」
「分かった」
俺はそう言って昨日作り置きしていたカレーを温め始め、冷凍ご飯をレンジに入れた。家事は大体俺がやっている。姉さんは洗濯機を操作することとぐらいしかできない。掃除も洗濯たたみもできないしほとんどしないため、姉さんの部屋は汚い。
俺の家族について説明すると、姉の
ちょうど夕食の準備ができた頃に姉の着替えが終わり、俺らはカレーを食べ始めた
「いっただきま~す」
「いただきます」
まぁ可もなく不可もない普通のカレーだ。料理は出来るだけで好きではない。
「姉さん明日から学校説明会の仕事があるから帰りが遅くなると思う。」
「オッケー!ていうかなんで急に仕事をするの?そんなタイプじゃないでしょ。」
「中学部生徒会長に頼まれた。文化祭とか体育祭に比べて仕事量は少なそうだし」
「へぇー」
姉さんは不思議そうな顔をしていた。確かにそんなタイプじゃないんだが。
「中学部生徒会長って誰?」
「綿津見玲奈さん」
「綿津見って…」
「知ってるの?」
「私が知ってるのは綿津見静音って子。それなりに仲良くて、私が高校生の時生徒会長やってた。拓が入学する前だから知らないと思うけど。」
俺が周りの会話に興味がないだけで、有名人だと思う。ちなみに姉さんの母校と俺の通ってる中高一貫校は一緒だ。姉さんも学校内でも有名人だったらしく俺は教師たちからも香月星羅の弟として認知されている。
「すっごい優秀な子で学校のテストで1位を取り逃したことはないし、全国模試でもTOP3の中に入ってるくらい静音は賢い子だったよ。しかも今日本の中でも一番賢い大学に通っているらしい」
「それはすごいな」
世の中にはこんなバケモンが存在するんだな。二次元の世界でしかこんな奴みねーよ。
「拓が言ってた綿津見玲奈って子も賢いの?」
「物凄く賢い」
「妹がいるって聞いたことあるし多分姉妹だと思う。」
姉さんと話しているうちに夕食は食べ終わった。洗い物は二人で分担している。これぐらいは手伝ってもらわないと俺が大変だ。姉さんには何回も家事を教えたが一向にできる気配がしない。
「拓、そういえば綿津見家の母親はかなりの教育ママで毒親って聞いたことある」
「ふーん、そうなんだー。」
ここ最近よく聞くようになった言葉だな。俺の父さんと母さんはいろんな事において自由にさせてくれたし、実際どんなものかは分からないが、ネットニュースとか見る限り、本当に最低な奴らだということは分かる。子供に自分の理想像になってほしい事はわからなくないが、過度なものは、逆効果なのではないか。親じゃない俺が言うのも難だが社会にしっかり出れるようなマナーを身に付かせつつ、子供主体で様々な事をやらせてみてそれを親がサポートしていき、助言をする事が子育てにおいて大事だと思う。
しかし、あの綿津見玲奈がそんなことで悩んでいるとは思えないのだが。
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