第4話 優等生「綿津見玲奈」 

 「香月くんに今年の学校説明会の役員になってほしいんだけどいいかな?」

 

綿津見玲奈わたつみれいなはそう言った。顔が一瞬見えなくて誰かわからなかったが、こいつは学校内でもかなり有名なやつなので知っている。中学部生徒会長を努めていて、周りからの信頼も厚い人間だ。おまけに優等生で全国模試もトップらしい。もちろん教員たちのお気に入りである。

 

 こういう時は何らかの理由をつけて逃げるのが一番いいのだが、1年に1回以上なにかの行事で役員にならなければいけないという訳の分からないルールが俺のクラスにはある。学校説明会は発表者は決まっているらしく、発表はしなくて済むので、こ

こで早めに役員になっておくのが得策だろう。


「分かった。役員になる。」

「ありがとう!明日の放課後ミーティングがあるから掃除が終わったら教室に集合でお願いね」

「了解」

 

まぁ綿津見も役員だから、任せておけばいいや


「あ、引き止めてごめんね。じゃあねーまた明日」

「さようなら。また明日」


 よし終わった。話し合いは聞いてるふりでいいし、スライドの編集を担当すれば最低限のコミニュケーションで済むだろう。早く家に帰って生物の世話をしよう。


「伝えたいことがあるんだけど今急いでないよね」

「どうかした?」


 綿津見が走って戻ってきた。クソ今度はなんだよ、面倒くさいなぁ。俺は今すぐ綿津見を無視して帰りたかったが話は聞いとこう。


「香月くんはいつも一人でいて、クラスのみんなと会話していないしからもっと反しかけやすいような雰囲気を出して、これを機に誰かに話しけてみるといいと思うよ」

「.......」

 

 そういうことかだから急に役員を勧めたと思ったらこれが狙いだったのか


「私も生徒会長としてサポートするから頑張ってみよう!」

「考えておく、やるとしてもサポートはいらない。」

「そう何かあったら言ってね!」


 そう言って綿津見は教室に向かった。

 いちいち人間関係についてとやかく言われる筋合いはないし、ああいうことをするのは生徒会長としての責任もあるのだろうが本当にやめてほしい。人の事情も知らずにあれやこれや言ってくるやつは俺の嫌いなタイプの人間だ。しかし、役員の方は引き受けてしまったからにはやるしかないか。


「あー蝶になりたい!」


俺は誰にも聞こえないように叫んだ。

 


 

 

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