(11)
「韓国映画の『羅刹』って知ってます?」
昼食を食べながら前田君が、そう言い出した。
こちらでも、北九州の現場と同じく、食事は基本的に温かいケータリングだ。
「……いや……。でも、どうしたんだ?」
「その映画の悪役の好物が……祝い事で出る仕出しのコムタンクッパなんですよ。それも特定の仕出し屋が作ったヤツが……」
「ああ、コムタンクッパって、今、君が食べてるヤツ?」
「はい……。やっぱり、本場のは美味いですね」
「じゃあ、夕食は、それにするか」
「ところで……変な事聞きますけど……
「……すまん……気楽に出来る話じゃなんでな……。いつか話す機会が有れば、その時にしてくれ」
「えっ?」
「オリジナル版で、出演者が事故死したって噂を知ってるか?」
「ちょ……ちょっと待って下さい。どう云う事ですか?」
「彼女と俺の関係を話すには……その事に言及しないといけなくなるが……俺にとってはキツい思い出でな……」
前田君の手に有った匙の動きが、一瞬だけ止まった。
それから……慎重に言葉を選んだかのような口調になった。
「複雑な気持ちです……。俺もTVの特撮モノに出てましたけど……その時に、怪我せずに済んだのも……過去に有った事故から教訓を得た訳ですよね……」
「そっか……今は……俺達の頃みたいな事故は……流石に減ってるのか……」
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