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「韓国映画の『羅刹』って知ってます?」

 昼食を食べながら前田君が、そう言い出した。

 こちらでも、北九州の現場と同じく、食事は基本的に温かいケータリングだ。

「……いや……。でも、どうしたんだ?」

「その映画の悪役の好物が……祝い事で出る仕出しのコムタンクッパなんですよ。それも特定の仕出し屋が作ったヤツが……」

「ああ、コムタンクッパって、今、君が食べてるヤツ?」

「はい……。やっぱり、本場のは美味いですね」

「じゃあ、夕食は、それにするか」

「ところで……変な事聞きますけど……眞木まきさんの親類と何か有ったんですか?」

「……すまん……気楽に出来る話じゃなんでな……。いつか話す機会が有れば、その時にしてくれ」

「えっ?」

「オリジナル版で、出演者が事故死したって噂を知ってるか?」

「ちょ……ちょっと待って下さい。どう云う事ですか?」

「彼女と俺の関係を話すには……その事に言及しないといけなくなるが……俺にとってはキツい思い出でな……」

 前田君の手に有った匙の動きが、一瞬だけ止まった。

 それから……慎重に言葉を選んだかのような口調になった。

「複雑な気持ちです……。俺もTVの特撮モノに出てましたけど……その時に、怪我せずに済んだのも……過去に有った事故から教訓を得た訳ですよね……」

「そっか……今は……俺達の頃みたいな事故は……流石に減ってるのか……」

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