(10)

 「おっちゃん」を演じていた間の記憶は無かった。

 しかし……NGは無かった所をみると……練習通り演じられたのだろう。

 もっとも、練習相手は、目の前にいる、この少女では無かったが……。

「すいません、親類の葬儀で合流が遅れました」

「えっと……君が……眞木まきほのかさん……?」

「はい……あ、やっぱり、大叔母に似てますか? 親類からも……よく、そう言われてて……」

「えっ?」

 ……まさか……。

「私の父方の祖父の姉は……オリジナル版でスクリプターをやっていた矢部遥です」

「あ……ああ、そう……。そう言えば……矢部さんは……?」

「亡くなりました……。さっき言った『親類の葬儀』は……大叔母のだったんです」

「あの……変な事を訊くようだけど……遥さんの事を『矢部遥』って呼びましたよね?」

「ええ……」

「その後、彼女は誰かと結婚はしなかったの……? まるで、名字が『矢部』のままような言い方だったから……」

「……はい……」

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