(9)
「おい……これ……何をやった? CG処理やる前だよな?」
次の瞬間、モニターに写ったとんでもない代物を見て、俺は、主演の前田君に、そう訊いた。
「流石に、取り込んだ映像をリアルタイムでCG処理するなんて聞いた事も無いですね……」
現在、撮影されているのは……オリジナル版では物語が新章に入った事を視聴者に映像で判らせる為のシーンだった。
倒れ伏した1号鬼に止めを刺そうとした黒炎龍鬼が、突如、「何か」に吹き飛ばされる。
その何かは……透明なモノだった。
しかし、何かが有る事は判る。
その「何か」の向こう側に有る風景が歪んで見えたのだ。
「『春日』さん、『福田』さん、そろそろ、現場の方にお願いします」
その時、スタッフの声。
前田君と俺の役名だった。
「わかった」
「わかりました」
そう言って、俺達は席を立つ。
ついに、「護国攘神団」が「人類に対する脅威」として狙い続けていた「神」の1人が姿を現わす。
俺のリメイク版での役は……その「神」の1人の護衛を代々勤めてきた家系の長老格にして、主人公にとっての「師」となる人物である通称「おっちゃん」。
「そう言えば、相手役は……?」
「もう現場に居ます」
バイク・チェイスの「ゴール」は、俺達が待機していた建物の近くになるように設定されていた。
しかし……。
まだ、打ち合わせでも会った事が無かった。
その「神」役の女優に……。
そして、待機していた建物を出て……その人物は……特撮ドラマよりも……むしろ、少女漫画か最近のアニメに出ていた方が違和感が無い髪型だった。
三つ編みのおさげを2つ作り、更にそれを輪っか状にしている。
如何にも「女の子」っぽい髪型なのに、着ているのは、迷彩模様の上着と、実用性重視のカーゴパンツにエンジニアブーツ。
その顔は……。
「
俺の記憶にある彼女よりは若かった……。
しかし、その顔には……親友の恋人だった女性の面影が、確かに有った。
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