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 モニター上では、性能において勝りながら、戦闘経験は不足している十二の量産の大半は倒れ伏していた。

 だが……問題は……一世代前の技術で改造された「鬼」である筈の黒炎龍鬼。

 翠牛鬼の怪力を打ち破った飛びつき腕十字は、闇翔鬼のジェット噴射により体を回転させる事で無効化。

 烈火龍鬼の高速移動による攻撃に、闇翔鬼のジェット噴射による擬似飛行能力と翠牛鬼の怪力が加わる。

 1号鬼の前に立ちはだかっているのは、強力かつ多彩な戦闘能力・特殊能力だけでなく、組織を抜けようとした「鬼」や、組織内の反主流派の「鬼」を幾人も粛清してきた経験の持ち主。

 それらの能力の使い方の巧みさは、本来の持ち主である「十三人衆」以上だ。

 初戦で「十三人衆」を倒した戦法が、悉く返される。

 オリジナル版では……黒炎龍鬼との戦いは物語中盤の山場となる回の最後のシーンだった。

 「護国攘神団」の「鬼」達は、仮想敵である「神」の力を無効化出来るとは言え……その時間は、最大で1分に満たない。

 大半は、初戦で「神」と相討ちとなる、

 組織最強のチームと言われた「十三人衆」でさえ、5回以上の実戦を経験した者は居ない。

 しかし……裏切り者・反主流派の「鬼」の粛清が専門の「最強の戦闘能力を持つ出来損ないの『鬼』」である黒炎龍鬼は、今までに数十人の「鬼」を倒している。

 1号鬼は、必殺の廻し蹴りである鬼龍トルネードを放つが……万全の状態では無い上に、ほとんどダメージを受けていない相手。

 威力も大きいが……動きも大きい頭の狙った廻し蹴りは、あっさり見切られ……。

 いや……待て……。

 この「高い蹴り」に対する返し技は見た事が有る。

 黒炎龍鬼の動きは……今、見学をしている「出資者の1人」の動きを取り込んだモノだと、スタッフの1人が言っていた。

 そして、その「出資者の1人」は「台湾のベンチャー企業の創業者」。

 しかし……その動きは……。

 中国武術はカンフー映画ぐらいでしか見た事が無い俺にも見覚えが有った。

 俺の親友で、本来「鬼面ソルジャーズ」の主演になる筈だった金藤雄介。

 九〇年代半ばに会った彼の伯父は「自分が学んだ流派には高い蹴りは無い」と言った。

 その理由は……金藤の伯父が学んだ空手の流派には、高い蹴りに対する返し技が有り……同じ流派の同格の相手が戦えば、高い蹴りを放った方が不利になる為。

 一対だ……。

 あの「出資者の1人」と金藤は……まるで一対。

 似ているが違い、違うが似ている2人。

 在日韓国人の母を持ち日本で育ちながら……の技が使えた金藤。

 「台湾のベンチャー企業の創業者」を名乗りながら……日本の伝統派空手の技が使えるらしい「出資者の1人」である若い女性。

 たしかに……この黒炎龍鬼の動きは……「時に剛、時に柔」と云うにふさわしいモノだった。

 モニターの中で黒炎龍鬼が1号鬼の鬼龍トルネードを返した時の動き……それは……の技法に似たモノだった。

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