(8)
「まぁ、御存知の方も居ると思いますが……説明します。まず、真ん中に居るのが……戦後日本SFの祖と言われる
映画化もされた「首都圏壊滅」の作者だ。
「その横に居るのが、戦後の日本漫画の祖である
「鬼面ソルジャーズ」の原作者である小野寺正一郎先生の師匠だ。
「そして、『鬼面ソルジャーズ』の原作者である小野寺正一郎先生と、日本アニメの代表作である『航時駆逐艦・雪風』の原作者である今村
「航時駆逐艦・雪風」……俺が主演していた「鬼面ソルジャーズ」と同時期のアニメ作品。
本放送時の視聴率はイマイチだったようだが、再放送で有名になった……らしい。
「そして、SF作家の
その2人が……この写真の中で、俺が顔を知らなかった2人だろう。
「えっと……光安リカさんと云うのは……名前は聞き覚えが有るが……」
「高校生の時に漫画家としてデビューして……その後『日本の少女漫画を変えた3人の天才』と呼ばれるようになった人ですよ。それも……『3人の天才』の中で、残りの2人から才能を嫉妬されるほどの……」
「どんな作品を
「色んな作品が有りますが……すぐに思い付く所では、宇美鷹志先生の小説の『幾億の星霜の果て』の漫画版ですね」
「どんな話だ?」
「タイム・パトロールもの、って言って判ります?」
「いや……イマイチ……」
「例えば、タイム・マシンが実在したとすれば、歴史を変える事も可能……いや、歴史を変える事も可能だと云う話は作れますよね?」
「ああ。じゃあ、その、歴史を変えようとする悪役を取り締まる話なのか?」
「ああ……それが……逆で……タイム・マシンで過去に干渉すると、そこで、元の歴史と新しい歴史に分岐してしまう、って設定なんですよ、この小説では……」
ん? 待て……その話……まさか……。
「で、無数の違った歴史が有っても良いとする者達と、たった1つの『正しい歴史』以外の存在を許さない者達との戦いの話で……正義の側は新しい歴史の分岐を生み出そうとする側なんですよ」
「よ……よく判んないな……」
「当時の超能力ブームも絡んでて……人類はある理由で滅びる運命に有るけど、無数に生まれた歴史の分岐のどれかの未来で、人類の滅亡を回避する事が出来る超能力者が生まれる可能性が有る。その一縷の望みに賭けてるのが主人公側で、人類滅亡の運命を甘受する事になっても、イレギュラーな形で生み出された歴史の分岐を消し去ろうとするのが……悪役の側なんですよ」
「い……いや……待て……それ……」
まるで……。
そっくりだ……。
「鬼面ソルジャーズ」と並ぶ小野寺正一郎先生の代表作「サイバノイド
「あ……やっぱり、御存知でしたか……。『サイバノイド
「ああ……」
「『航時駆逐艦・雪風』や森実先生の代表作の1つである『終りなき旅の終り』も同じような話なんですよ。人類滅亡を避ける為に無数の歴史の分岐を生み出そうとする主人公と……先に待つのが人類の滅亡であっても、唯一無二の『正しい歴史』以外の歴史を消し去ろうとする悪役との長年に渡る戦いの物語です」
「どう云う事だ?」
「どの作品も……一九七〇年代に生み出されてるので……当時の社会風潮との関係……と云う所で纏めたいんですが……中々、巧くいかなくて……」
「ちょっと待て……そんな話なら……俺から何か聞くべき事が有るのか?」
「そ……それが……この写真が有る旅館には、ある都市伝説が有って……」
「何だ?」
「そのSF大会と云うイベントで、その旅館に来た漫画家が、ある絵を描いたスケッチ・ブックが残されてると……」
「だから……どう云う絵だ?」
「複数の漫画家が描いたものなんですけど……何故か、題材が全て同じなんですよ……」
「やけに……もったいぶるな」
「えっと……さっきも言った通り、このイベントは一九六〇年代末に行なわれたって言いましたよね?」
「ああ」
「で、『鬼面ソルジャーズ』の放送と原作は……一九七〇年代初頭ですよね」
「そりゃ、知ってるよ。俺が出た番組なんだから……」
「ですので……その……複数の漫画家が……その時には存在しなかった、ある架空のキャラクターの絵を
「何だ、一体?」
「護国軍鬼です」
「へっ?」
「『鬼面ソルジャーズ』の……今風に言うなら『ラスボス』である護国軍鬼を2体」
「2体?」
「2体の護国軍鬼が戦っている絵を複数の漫画家が……描いてるらしいんですよ。……護国軍鬼が登場した作品である『鬼面ソルジャーズ』が発表される数年前に……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます