(7)
「1ついいか? 俺がやった話を公表するのは、俺が死んだ後だ。あと、今回は録音は無しだ」
俺は例の渡部博明とか云うフリーライターを行き付けの喫茶店に呼び出した。
「わかりました」
「で、そもそも、あんたはどこまで知ってるんだ?」
俺は、金藤の死に関する情報を、このうさん臭い金髪のチョイ悪気取りの格好の男に託す事にした。
もっとマシな相手は……残念ながら、俺の狭い交友関係では見付ける事が出来なかった。
「五十嵐さんは柔道や空手もやられてた筈なので……柔道家の牛島辰熊先生の事は御存知ですよね?」
渡部は、いきなり意外な名前を出してきた。
「い……いや……そりゃ……伝説の柔道家の名前ぐらいは知ってるが……」
日本柔道史上最強候補の1人である「鬼の木村」こと木村政彦を育て上げた人物……。
だが、一体全体、何故、特撮番組に関する話の筈なのに、その名前が出て来る?
「その牛島先生の奥様の実家が……日本で3番目に古い家系だ、ってのは御存知ですか?」
「はぁ?」
「正確には神道に関する家では日本で3番目って云う意味ですが……」
「何を言ってる? どう云う事だ?」
「日本で最も古くから続いてると言われる3つの家系……。1つ目は
「だから……何の話だ?」
「『鬼面ソルジャーズ』のスクリプターだった
TVやドラマでは、一見、一続きのシーンに見えるモノでも、実は別の日に撮影されている、などと云う事は良く有る。
だが……注意しないと、作品の中では数分後の筈なのに、影の向きその他が全く変ってしまっているようなミスが発生してしまう。
スクリプターとは、そのようなミスの発生を防ぐ為の管理を行ない、また、その管理の為の記録を取る係だ。
だが……。
矢部遥。
彼女は……「鬼面ソルジャーズ」のスクリプターであると同時に……金藤が付き合っていた女性でもあった。
「矢部さんは……牛島辰熊先生の奥様の実家の分家の出身で……どうやら、牛島先生の奥様と面識が有ったようなのです」
「まぁ……そりゃ……親戚なら面識ぐらい有るだろうが……」
「それと、もう1つ。矢部さんの出身地である熊本の、ある温泉旅館に飾られてた写真です。一九六〇年代末に、その旅館を借り切って行なわれたイベントの写真なのですが……」
「イベント?」
「ええ、日本SF大会と云う、年1回、今でも行なわれてるSFファンの集まりです。開催場所は毎年変り、この写真が撮られた年が九州では初めて開催だったみたいです」
そう言って……渡部はノートパソコンの画面を俺に向け……。
「な……な……何だ? 何故?」
面識の有る人も居た。
面識は無いが……名前と顔ぐらいは知っている有名人も居た。
その写真の中に……明らかに、俺が初めて会った時より若い矢部遥が居た。
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