(6)
「やれやれ……結局は、新作映画の宣伝に協力しろ、って事か……」
俺は喫茶店でコーヒーを飲みながら、吉村にそう言った。
二〇〇〇年ごろから、あちこちで見掛けるようになったアメリカに本社が有るチェーン式の有名喫茶店だ。
はっきり言えば……俺の行き付けのあの潰れかけたジャズ喫茶よりコーヒーは美味い。
これまた、はっきり言えば、店内に流れるBGMも……行き付けの喫茶店より気が効いたものばかりだ。
だが、客が多い分、読書などには向かないだろう。
「まぁ、俺は悪い気はしないが……」
テーブルの上には2つの脚本。
1つは「鬼面ソルジャーズ・神」。
もう1つは「アルティマ・ネクサス・真」。
「俺は……ちょっとな……」
「なぁ……あの噂……本当だったのか?」
「えっ?」
「『鬼面ソルジャーズ』には、あんた以外に『元々の主演俳優』が居て、そいつが撮影中に事故死したって……」
「本当だ。しかも、死んだのは……俺の親友だった男だ」
親友だと思っていた……。しかし……九〇年代のあの日……俺は思い知らされた。その親友の事を何も知らなかった事を……。
「おい、やけにあっさり……」
「俺も齢なんでな……。そろそろ迷ってるんだ。この話を墓の中にまで持ってくべきかをな……」
「今、その話、公開したら……」
少し前の流行語で言う「終活」を始めようと云う頃になって……これだ。
五〇年前、俺の親友の死は、制作会社とTV局によって隠蔽された。
そして……このリメイク版には……アメリカの配給会社まで絡んでいるらしい。
どうすればいいんだ……一体?
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