(5)
「でもさ……細かい事だけど……これ……」
そう言って俺は、「鬼面ソルジャーズ」最後にして最強の怪人である「護国軍鬼」を指差しながら、気になっていた事を口にした。
「確かに、本放送時のにはそっくりだけど、原作者の小野寺正一郎先生の構想だと、本当は鏡のような表面にしたかったんだよな」
だが、あの頃の特撮技術では……いくつもの制約が有って実現出来なかった。
その結果、目の前に居るのと同じ、くすんだ灰色の装甲になったのだ。
「可能です。実は、監督は権利関係がクリア出来れば、『鬼面ソルジャーズ』最終回のリメイクをやりたいと言っています」
「えっ?」
そう言って差し出されたのは……スケッチブック。
何枚もの絵コンテが描かれている。
「ああ……でも……鏡面装甲だと……カメラが装甲に写っちゃわない?」
「そこも問題ありません。例えば、これは……鬼面ソルジャー1号鬼の顔のカメラで撮影した映像で、これは逆に護国軍鬼のカメラで撮影した映像で……これは施設内の監視カメラで撮影した映像です」
えっ……?
まさか……。
原作者の小野寺先生は師匠だった
そして、いつしか、とんでもない映画マニアになり……ある特技を身に付けた。
ある位置にカメラが有った場合に、そのカメラからどのような映像が撮れるかを……今風に言えば頭の中で、一瞬でシミュレーションする事が出来るようになっていた。
例えば、漫画でしか表現出来ない画を描く場合は「有り得ない位置にカメラが有る」ような状況を頭の中でシミュレーションしていたらしい。
そうか……この監督は……。
どうやら……小野寺先生と同じ「異能」を持っているらしい。
たしかに、映像作家にとっては得難い「異能」だろう。
「実は、リメイク版のタイトルも決っているんです」
通訳がそう言うと……監督は、一冊の台本を俺に手渡した。
その表紙には、筆書きらしい見事な書体で、こう書かれていた。
『鬼面ソルジャーズ・神』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます