第二章:護国軍鬼

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 六〇年代の巨大ヒーロー「アルティマ・ネクサス」と俺が主演だった「鬼面ソルジャーズ」のリメイク版の話は、あっと言う間に進んだ。

 多分……あの監督と会った時点でオリジナル版の権利者・関係者への根回しは済んでいたのだろう。

 俺は、リメイク版で主人公の支援者である「おっちゃん」役で出演する事になった。

 そして……。

「あ……やっぱり、同じ九州でも、撮影の合間に、ちょっと出掛ける、って訳にはいかないか……」

「ええ……北九州と熊本じゃ……特急か九州新幹線使わないと、現実的じゃないですね」

「どれ位の距離なんだ……?」

「ええっと……ざっと、小倉から博多までが、関東で喩えるなら、上野〜土浦か東京〜小田原ぐらいで……」

「おい、同じ県だろ……」

「更に、博多から熊本までが、その倍ぐらいです」

「上野〜土浦や東京〜小田原の、ざっと3倍か……」

「ええ……」

 現場は、最近、映画やドラマの撮影の誘致を積極的に行なっているらしい北九州市内。一部のカーアクションやバイクアクションは、その手の規制が日本より緩くて、その手の経験が豊富なスタッフをすぐに調達出来る韓国。

 俺は、撮影の間、基本的に北九州市内に泊まりだ。

 主人公の敵組織である「護國攘神団」のアジトは、映画・ドラマ撮影用に貸し出されてる廃工場が使われる。

 まぁ、最後の戦いの場は、護國攘神団が作り出した最強の人間兵である「護国軍鬼」の量産用生産ライン。

 工場の中なら、よりそれっぽく見えるだろう。

 そして……同じ九州なので、あの胡散臭いフリーライターが言ってた熊本の温泉旅館まで……都市伝説になっているらしい「スケッチブック」の確認に行こうとしたが……劇団の若手にネットで調べてもらったら……撮影の合間に気軽に行ける距離じゃなかった。

「ところで、熊本って……」

「ああ……熊本の温泉旅館に『鬼面ソルジャー』の原作者の小野寺先生が描いたスケッチが残されてるって、聞いてな……」

「じゃあ、リメイク版の監督も誘ったらどうですか?」

「へっ?」

「知らなかったんですか? あの監督、日本の昔の特撮の大ファンとして有名ですよ」

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