(2)
『すいません、五十嵐さん。どうしても出ていただきたいイベントが有って……』
6畳1間の安アパートの自宅に戻ると、所属している劇団の事務から電話がかかってきた。
「あの……『鬼面ソルジャーズ』関係のイベントなら嫌ですよ」
芸能関係の仕事をやって五十年以上。
事務所や劇団は何回か変わったが……この事だけは言い続けてきた。
『いや……外国の映画のプロモーションに出ていただきたくて……』
「何で、俺なんですか?」
『監督が……昔の日本の特撮のファンで……』
しかし、どの事務所も聞く耳は持ってくれなかった。
「やっぱり、『鬼面ソルジャーズ』関係じゃないですか」
いつもこうなる。
『で……でも……あの……プロモーションには出なくてもいいので……監督が是非会いたいと』
「何が、どうなってるか知りませんけど……断わって下さい」
『い……いや……でも、今の舞台が終った後ですので……せめて……』
どうしても嫌だ。話は終りだ。電話はこれで切る。
そう言って話を終りに出来る性格なら、俺の人生はどんなに楽だっただろう。
1時間近くに渡る電話の結果、俺は、その外国の映画の監督に会うだけは会うと承諾してしまった。
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