第3話:あなたの居ない家でおるすばん

(SE)電気のスイッチを消す音


モモ「あ。もしかして、今日夜まで帰ってこない日だ!?

   久しぶりじゃない? 半月ぶりくらい?

   じゃあ今日はあたし、おるすばんなんだね」


(SE)廊下を歩く音


モモ「しょうがないから、見送ってあげる。

   大サービスなんだから、喜んでよね! 」


(SE)玄関のドアを開ける音


モモ「ばいばい。ちゃんと帰ってきてね」


(SE)玄関のドアが閉まる音


モモ「行っちゃった。

   カバンがスーツケースじゃなかったし、

   今日中に帰ってくると思うけど」


モモ「油断したなー、最近はいつも一緒に居れたから。

   昔はしょっちゅう出かけてて……、

   昼間はとっても寂しかったな」


モモ「……。

   変なこと思い出しちゃった。

   そうだ、ご飯のお皿を見に行こう! 」


---

(SE)猫が廊下を駆ける音


モモ「ご飯とお水が山盛りだ。

   カズマは外出時間が長いほど

   お皿とお水のボトルの量を増やして家を出る。

   これはしばらく帰って来ないかも……」


モモ「しかも、こういうときのご飯って、

   必ずキャットフードなんだよね!

   あたしはカズマのお味噌汁が好きなのにっ!」


モモ「あと、温かいご飯が好き~。

   カズマ最近は三食ぜんぶ作ってくれてたから、

   キャットフードあんまり食べたくないな~」


モモ「……でも、お腹すいたら食べようかな」


---

(SE)セミの鳴き声


モモ「外は暑そう。

   カズマは、あたしがおるすばんするときは

   クーラーつけっぱなしにしてくれるんだよね

   ふふふっ、優しい」


モモ「眠いな~。お昼寝しようかなぁ」


モモ「ん? なんだろ、アレ」


(SE)ケージを叩く音


モモ「ケージになんか、カメラが付いてる。

   この角度だとトイレが映っちゃうじゃない。

   朝、カズマがケージをガチャガチャしてたのこれかぁ。

   こんなのがケージに付いてたらリラックスできないよ。

   とりあえず、カメラの向きを変えておこう」


(SE)ケージを叩く音


モモ「これで安心。

   おトイレしても映らないよ」


モモ「リモートワークとかいうのだったら、

   カメラなんかつけなくても問題なかったのにね!」


---

(SE)子どもの笑い声


モモ「もう夕方か~。

   カズマが居ないと、一日がこんなに長く感じるんだね。

   寂しいな……」


モモ「でも2年前よりももっと前は、日中カズマが居ないの

   当たり前だったよね。

   でも、今一緒に居れない方がとっても寂しい」


モモ「カズマにはずっと傍にいてほしい。

   いつもご飯作ってほしいし、

   ぽかぽかの板を出しながら仕事してほしい。

   あの板気持ちいいから……。

   ご飯作れるスキルとあの板持ってるのは美点だよね! 」


モモ「あたし、ワガママになっちゃったかな……」


モモ「いや! カズマにはあたしを可愛がるべき義務があるのよ!

   だから、いっぱい可愛がってほしいの」


モモ「早く帰って来ないかな、カズマ」


---

(SE)玄関のカギを開ける音


モモ「!!!

   カズマ、帰ってきた!!」


(SE)猫が廊下を駆ける音


モモ「あたしは一番可愛いポーズで、カズマを迎えてあげる。

   可愛いって、いっぱい誉めてもいいんだよ? 」


(SE)玄関の開く音


モモ「おかえり、カズマ。

   ちゃんといい仕事できたのかしら? 」


モモ「わっ! そんなに頭をなでなでされると……、

   気持ちよくなっちゃうよ……」


---

(SE)ぐつぐつと鍋が煮える音


モモ「夕飯は作ってくれるんだ!

   嬉しい~、ご飯のお皿山盛りだったから、

   今日はもう食べられないかと思ってた」


(SE)座卓に食器を並べる音


モモ「今日のお味噌汁はきのこだ~! 

   えのき大好き!

   温かくって、美味しいよ、カズマ」


モモ「え?

   カメラの位置変えちゃったの?って??

   いや、変えるよね。リラックスできないし」


モモ「健康状態を知るの?カメラで?

   なんだかよくわかんなーい!

   頑張ってまたケージに付け直してるけど、

   後で外しておくから無駄だよーだ」


モモ「ねぇ。カズマ。

   明日はまた一緒に居れるかな? 」


モモ「ずっと傍でお話したり、

   一緒にお昼寝したりしたいな」


モモ「カズマとぴったりしてるの、

   あたし大好きだよ。

   カズマと一緒に居るだけで、

   あたし元気になれるの」 

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