第2話:あなたと一緒にリモートワーク

(SE)キーボードを打つ音


モモ「じーーっ」


(SE)マウスをクリックする音


モモ「じーーーーっ」


(SE)猫の鳴き声


モモ「あーあ。退屈しちゃう。

   あくびも出ちゃう。

   これが始まるとカズマ、全然こっち向いてくれない! 」


モモ「ずっと板を一人で叩いてるんだよ。

   じっと座って。

   特に楽しそうに見えないけど、

   けっこう長くやってるの」


(SE)ノートに走り書きする音


モモ「……うん。

   今日は一人で座ってるのがとっても長い」


モモ「板のフタにはたまに、

   家に来たことの無いニンゲンが出るんだよ。

   そんで、カズマ、フタに出てるニンゲンに向かって

   めっちゃ話すの」


モモ「あれはちょっと面白い。あれ始まんないかな。

   でも今日は、一人で板を叩いてばかりいる」


(SE)座椅子を引く音


モモ「お?

   立った。カズマが立った! 」


モモ「カズマ、お出かけするの?

   どこ行く? どこ行こっか!? 」


モモ「……なーんだ、コーヒーのおかわりかぁ。

   じゃあ、一人で板を叩く遊び、まだ続けるんだね」


(SE)ドアを開閉する音


モモ「カズマ、居なくなっちゃった」


モモ「チャンス到来☆」


(SE)座卓にのっかる音


モモ「この板、すごーくぽかぽかして、

   気持ちいいんだよねー」


モモ「寝そべるとお腹がじんわりあったまって、

   とっても気持ちがいいの……」


モモ「ひなたぼっこのぽかぽかよりも、

   いい……」


モモ「ぐーっと身体を伸ばすとね、

   お腹が触れる場所が増えて、

   もーっといい気持ちになるの」


モモ「んんー……」


(SE)パソコンの起動音


モモ「この板、ちっとも動かないし歩かないくせに

   いつも微妙にうるさいんだよね。

   そんでいつも、フタが光ってて眩しいの」


モモ「フタに小さい絵がいっぱい書いてある。

   カズマがこの絵を描いたのかな。

   ……こんな細かいの描いてて楽しいのかな」


モモ「まぁいいや。

   おなかぽかぽかしてたい……」


(SE)ドアを開ける音


モモ「あ。バレた」


モモ「カズマ、あたしが板に寝そべってると

   一生懸命どかそうとするんだよね」


モモ「やー。やーだーよー」


モモ「もっとこの板で寝てたいー」


モモ「どかないもんね。

   びろーーーーん」


モモ「え? テレカン?

   …ああ、フタにニンゲンの出るやつ! 」


モモ「しょうがないなぁ、譲ってあげる」


----

(SE)マウスをクリックする音


モモ「カズマは板を叩きながら、

   なんか話してるみたいだね」


モモ「あたしはおりこうに

   カズマに背を向けて、じっとしてるの」


モモ「そう、じっとしてるの、

   じーーっと見つめてるの実は。

   姿見使ってね」


モモ「カズマもまさか、

   見られてるとは思わないでしょ。ふふふ! 」


(SE)座椅子を引く音

(SE)足音


モモ「お? こっち来るの?

   もしかして分かっちゃった? 」


(SE)猫の鳴き声


モモ「こんな時間にだっこしてくれるなんて

   あたし、とっても嬉しい」


モモ「もう、このまま一緒にお昼寝しようよ」


(SE)座椅子に座る音


モモ「フタにニンゲンが居る。

   初めて見るニンゲンだ」


モモ「あたし、モモ。

   カズマと一緒に暮らしてるの。

   今度遊びにおいでよ」


モモ「そう、あたしは白猫。

   まじりっけない綺麗な白色の毛と、

   背中からしっぽのラインが自慢なの」


モモ「せっかくだから、

   あたしが一番かわいく見える角度で

   映ってあげるね」


モモ「ほ~~~ら、よく見て。

   かわいいって?

   ふふふ! そうでしょう? 」


----

(SE)猫の鳴き声


モモ「リビングでひなたぼっこするのは

   気持ちがいいなぁ」


モモ「さすがに遊びすぎたから、

   カズマの部屋から出てきたよ」


モモ「カズマが板叩くのも、フタのニンゲンと会話するのも、

   とっても大事なことなんでしょう?

   たぶん、狩りみたいなことなんでしょう? 知らんけど」


モモ「それに。

   お昼の時間のリビングは、

   日の当たりが最高だしね。

   板よりやっぱりお日さまだよね」


モモ「ここ2年は、カズマはいつも大体うちに居る。

   でも、いつも傍に居るのに遊べないんだよね。

   カズマが昼間はずっと外に行ってた頃より、

   なんだか寂しい」


モモ「もっと一緒に、遊べる時間が増えたらいいのに。

   大好きだよ、カズマ。

   あたしのこと、ずっと抱きしめててもいいんだからね。

   あたしもカズマのこと、ぎゅーってしたいな」

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