第19話 一休復活
永遠とも思える時間が経ち、扉の上のランプがジジッと音をたてて消える。
どうやら、修理は終わったようだ。
中から少しふらつきながら、扉を開けてリーペが出てきた。リーペは、
「あなた、ベッド。」
と言うと、ベッドの様な形になったおっちゃんの上に倒れ込むようにして寝転がる。
「はあ、疲れた。」
その様子を見ていたアーリンがリーペへと詰め寄る。
「一休ちゃんは!?治ったんですよね!?」
「ええ、中にいるわよ。」
アーリンはその言葉を聞いて、脇目もふらずに修理室の中へと走って行った。
その様子を見ていたダンポは内心やれやれと思いながら、リーペに礼をする。
「治してもらったというのにすまんのう。感謝してもしきれぬ程じゃ。」
「言葉の感謝はいいから金を出しなさい。」
「うむ、そうじゃなあ100000妖銭でどうじゃ?」
「少ないわね。せめてその3倍は欲しいわ。」
ダンポは少し渋い顔をしながらも、わかったと言うように頷く。
「金は一休が持っているから後で渡すように言っておこう。」
「よし、契約成立ね。」
そうこう話しているうちに、アーリンに肩を貸されながら一休が歩いてくる。
ダンポがそれを見て口を開く。
「それにしても随分と手酷くやられたのう。相手は、オイリーかのう?」
「ええ。消耗して油断していたとはいえ、彼はかなり強いわよ。」
「まあ、そうでも無い限りお主がそこまで追い込まれることは無いだろうしのう。」
「それで、私を助けてくれたのはどこのどなたなのかしら?」
そう言って辺りをキョロキョロと見回す一休。それに答えるダンポ。
「ああ。そこのベッドで寝そべってる修理屋のリーペさんとベッドになってるあの、えーと、名前なんて言うんじゃろ。」
「ん?俺の名前か。そう言えば言ってなかったな。俺はゴウダイって名前だ嬢ちゃん。」
そこで一休が突然畏まり、言う。
「改めてお礼を言わせていただきます。リーペ様、ゴウダイ様の御二方のご尽力のお陰で助かることが出来ました。私ができる最大級の敬意と感謝を、今後御二方の子々孫々に至るまで、幻霊族の加護を。」
おっちゃん改めゴウダイが混乱した様子で、
「おいおい嬢ちゃん。あの傲岸不遜な態度はどうしたんだ。」
と言うのに対してリーペは唯、
「300000妖銭」
と言う。
一休は慌てて妖銭を取り出し、リーペに渡す。
リーペはそれを受け取り、こう言った。
「金の切れ目が縁の切れ目、これで直した対価は貰ったわ。これ以上感謝するのはやめてちょうだい。」
一休は一瞬食い下がろうとしたように見えたが、途中で言葉を飲み込んだ。
そして一休が
「幻霊の加護。」
と言うと、光球が現れリーペとゴウダイの頭上で弾けた。
ゴウダイは一休に聞く。
「何をしたんだ?」
「幻霊の加護をかけさせてもらいました。困った時にきっと役に立つはずです。」
「そうか、ありがとよ。で、嬢ちゃん達はこれからどうするんだ。あと、タメ口で頼む。堅苦しいのは敵わん。」
「わかりっ…たわ。私達はこれから妖都を目指して旅を続ける予定よ。」
それを聞いてゴウダイは眉を顰める。
「そうか、妖都か…。」
「何か問題でも?」
「ああ。妖都自体に問題は無いんだが、途中に通る街が問題でな…。この水戯郷から妖都にまっすぐ行くには
「いえ、知らなかったわ。」
「そうか、じゃあまず世捨街について説明した方がいいな。世捨街は簡単に言えば妖界の
一休は訝しげな顔をする。
「塵芥溜めってどういうことかしら?」
「文字通りの意味だ。世捨街は妖界中の塵芥が集まる。壊れちまった妖道具から口減らしの為の老人や赤ん坊まで、捨てられているものは多岐にわたる。この水戯郷からも多くの腐った米が捨てられているらしい。」
少しやるせない表情でゴウダイは言う。
「なるほど。それで、そこがどうしたのかしら?」
「世捨街は元々治安が悪いんだが、最近それが更に悪くなっちまったらしくてな。」
「それは何故なのかしら?」
「なんでも捨てられた妖道具の内の幾つかが暴走してしまったらしくてな。世捨街の住人の多くが傷ついたんだ。元々塵芥を捨てる連中は嫌われていたが、通過すらさせないようにしたり、殺して金品を奪ったりしているらしい。」
「なるほど、複雑な問題って事ね。」
「まあ、平たく言ってしまえばそういう事になるな。」
「忠告感謝するわ。まあ、何とかするわよ。」
「そうかい。嬢ちゃんはあんまり腕っ節は強くなさそうだから、気を付けな。」
「こう見えて、それなりには強いのよ。」
そう言って肉食獣のような笑みを浮かべる一休。ゴウダイもその笑みを見て感じるものがあったのか、冷や汗を流しながら苦笑いする。
「ハハッ。これは確かに心配要らなかったかもな…。で、今夜の宿はあるのかい?」
「いや、無いわね…。」
「すまん、前言撤回だ。やっぱり心配だ。今夜は泊まってけ。リーペもそれで良いか?」
リーペに問いかけるゴウダイ。それを聞いたリーペは一言、
「金さえ払えば。」
という。ゴウダイが少し怒って呆れ気味に言う。
「お前なあ…。」
一休が慌てて止めに入り、リーペに言う。
「もちろんお金は払います!それと、追加で払うのでこの剣の修理もお願いしていいでしょうか?」
そう言ってボロボロになってしまった八握剣を取り出す一休。それを見て若干難しそうな顔をしながらもリーペは承知したというように受け取った。
そうして、部屋に通される一休達。
その夜、アーリンは一休にくっついて離れなかった。
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