第17話 激闘!八岐大蛇!

八岐大蛇は少しの間も開けずに、首を連続でしならせながら振るってくる。

その速度たるや凄まじく、アーリンを抱えているままの一休では避けることすらままならなず、徐々に肌や服が切り裂かれていく。


「一休ちゃん、私の事はほっといて良いから。八岐大蛇を攻撃して!」


「いえ、無理ね。今アーリンを放り出せる余裕はないし、放り出した所でアーリンが即殺されるのが目に見えてるわね。」


そう言って一休はしばらく避け続ける。

そうこうしている内に、ダンポが一休の前へと叫びながら躍り出てくる。


「体面積肥大化ァ!」


そう言ったあとダンポの体が突然巨大化し、一休達を守る。

ダンポが何度も攻撃をくらっている音が聞こえてくるがそんなことは気にもとめず、一休は退避する。


「アーリン、貴方は私が幻影をかけるから端の方で隠れてなさい。」


「そんな!私も…。」


そう言いかけたアーリンの口に人差し指をつけ黙らせる。


「悪いけどあしでまといね。すぐに終わらせるからそこで見物してなさい。」


「あしでまとい…。分かった。今は隠れとくね。」


それを聞き優しく微笑む一休。そして、一休はアーリンに素早く術をかける。


「幻包・不可知。」


途端にアーリンの身体は消え失せ、どこにいるのかさっぱり分からなくなる。一休には感じることは出来ないが、匂いや細かな音等も全て感じることは出来なくなっている。

一休は見えなくなったアーリンに安心させるかのようにヒラヒラと片手を振って言う。


「じゃあさっさと倒してくるわね。」


そう言って一休は巨大化したダンポの体の後ろに隠れて、ある術を解除する。


「本当はあまり使いたくないけれど、背に腹は変えられないわね。幼体化・解除!」


一休の周囲をもやが包み込む。

もやが晴れ、その中から出てきたのは一休をそのまま成人くらいにしたような美女だった。続けて、その美女は術を唱える。


「祖霊憑依・宮本武蔵!」


美女の体が紅く発光し、両手には1本ずつ刀の様な物が握られている。

美女はダンポに呼びかける。


「ダンポ!もうやめていいわよ!」


「ん?一休?その姿は久しぶりじゃのう。」


「まあね。神代の怪物を相手にするのだからそれなりの力はいるわ。さて、まずは動きを拘束させてもらうわ。妖鎖!」


一休が術を唱えると八岐大蛇の周囲に鎖が出現し、巻きついた。と、思ったら次の瞬間鎖は弾けて消えた。


「術が消された…?それじゃあ物理で殴るしかないわね。」


そういって一休が八岐大蛇へ向かい走ると、八岐大蛇は首を振り攻撃してくる。それを跳んでかわした一休はそのまま体を回転させ、中央の頭を斬り飛ばそうとする。

しかし、八岐大蛇は素早く首を引き、躱してしまう。


「動きが速すぎるわね…。やっぱりこれを使いましょう。」


そう言って一休は酒甕を取り出し八岐大蛇へと全て投げつける。

そしてバリンっと言う音と共に全ての首に酒がかかったのを確認し、しばらく攻撃を躱し続けつづけていると、徐々に八岐大蛇の動きが鈍り始めた。

それを見て今度こそと言わんばかりに首を斬る。すると、驚くべき事に斬った首から新たに頭がふたつ生えてきた。


「…これはまずいわね。ダンポ!」


「うむ。」


ダンポは巨大な炎球を出現させる。

それを見た一休は再び中央の首を2つ同時に切り落す。


「今!」


一休の言葉と同時にダンポは炎球を首に着火する。

首は…再生しない!


「次いくわよ!」


そう言って今度は中央の首の左の首を切り落とす。

ダンポもそれに合わせて炎球を着火。酒の影響か、よく燃える。と、そこでダンポの切羽詰まった言葉が聞こえる。


「一休避けるんじゃ!」


「え?」


一休は突如、中央の首から地面に叩きつけられる。すぐさま受け身をとって地面を転がり退避する。


「な、なんで中央の首が?」


そう言って八岐大蛇の首を見ると、まだ切り落とされていない首が、炎と共に自分の首を食べている。そして、炎が無くなると、新たに首が生えてくる。


「随分とえげつないことを…。とはいえ効果的ではあるわね。さて、あいつを倒すには1度に全ての首を斬るか、完全に消し飛ばさないといけないわね。ダンポ、10秒!」


「うむ!体面積肥大化!」


ダンポが再び巨大化し、盾となる。


「招来十種神宝・八握剣!」


一休が術を唱え終わると、異空間から8つの柄のついた剣が呼び出される。

そして、一休がその剣を握ると、空中に7つの刃とさっきまで持っていた紅い2本の刀が浮かび、合計10本の刃となる。それらはひとつに融合し、合計拳10個分位の刀身の神々しい長剣になる。一休はダンポに呼びかける。


「ダンポいくわよ!上手く避けなさい!」


「ちょまっ…」


そして一休は剣を一振り。


「対神流剣術奥義・破神!」


音が消え、剣閃の後を追うように空間がズレる。その後爆発的な光に視界が埋め尽くされる。光が収まった後、一休は息を切らしながら膝をついていた。剣の刃はかなり、刃こぼれしてしまった。


「はぁ…はぁ…。ダンポ…無事かしら?」


「うむ、ちと危なかったが。」


「ちっ」


「うぉぉい!今舌打ちしたよなあ!」


「いえ…して…ないわ。それよりアーリンの幻包を解除したから、様子を見てきてちょうだい。」


「いや、舌打ちしたじゃろ…。まあ良いか、見てくるとしよう。」


そう言ってダンポは匂いを嗅ぎながらアーリンの元へと向かう。


「ふう、流石にちょっとつか…っ!」


突如、一休の胸を痛みが襲う。

一休が目線を落とし胸元を見ると、液体でできたナイフのようなものが胸を貫いていた。

一休は刺してきた相手に問う


「ぐっ…最初から…?」


「ああ、悪いが死んでもらうぜ。ただ…カレェはありがとよ。」


オイリーはそう、答える。

オイリーは1度ナイフの様にした腕を引き抜き、もう一度とどめとばかりに突き刺す。

一休の体は前へと倒れ込む。オイリーはそれを見て、


「司令完了。すまん。少しの間だったけど楽しかったぜ…。ダンポさん達まで殺したくはないから、じゃあな。」


というと、液体となり高速で去っていた。


一休の死体はそのまましばらくすると消えてしまった。








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