第15話 ダンポの芸、そして密談
酒屋を探して歩き回る一行。
「一休ちゃん、あれじゃない?」
「ん?ああ、多分あれね。」
そう言って見つけたのは、液人族の店主がやっている酒屋だった。沢山の酒甕が置いてあり、ほんのりと酒の匂いが漂ってくる。
「おじさん、酒売って頂戴。」
「あいよ!どれくらい欲しいんだ?」
「この店で売っている分全て。」
「そ、そんなに買ってくのか!?」
「ええ、勘定早くしてくれるかしら。」
一休が急かすと、店主は酒甕を数え始める。
「あ、ああ。全部で1,2,3,4…20個だから、20000妖銭だな。」
「はい、20000妖銭。」
「お代確かに。毎度あり!で、どうやって持っていくつもりだ?」
と店主が聞いてくる。
「ふふ、こうやってよ。」
と言い、一休は術を発動する。
「空間幻影・収納!」
唱え終えると、異空間への穴が空く。
中には野営道具や豪華な鏡等、色々な物が入っているようだ。
その中に次々と酒甕を入れていく一休。
それを店主は目を見開き、口をあんぐりと開けて見ている。
「さて次は…、ちょっと路銀を稼がせて貰いましょうか!」
そう言って一休は近くの服屋へと入り店主と何やら交渉をしたかと思うと、奇抜な服と仮面を付けて戻ってくる。そして道の真ん中に立つと声を張り上げる。
「さぁさぁ皆様お立ち会い!此処に居るのは世にも珍しき妖怪の、猫又でございます。これから、彼が行うのは世には出回っていない猫又の秘術。おっと、そこのお兄さん。いい剣を持っているね。それに腕も良さそうだ。その刀でこの猫又を斬ってご覧なさい。」
その声を聞いたのか、周囲にだんだんと人が集まってくる。一休はその中の1人、呪人族と思われる男性に声をかける。
「ふん。良いのか?死んでも知らんぞ。」
「はいはい、大丈夫ですよぉ。」
「ならば!イィヤアア!」
そう言って男はかなりのスピードで抜刀し、ダンポは一刀両断される。その速度たるや、一休でもギリギリ目で追いきれるかどうかというところだ。
「おい、死んでしまったぞ。」
「あらあら、何を言っているんですか?」
「なんだと!そこに死体があるでは無いか!」
そう言って男はダンポの死体を指さす。
と同時にダンポの身体が燃え上がり、2つの炎の塊となった。その炎は様々な色に姿を変え、辺りをぐるぐると飛び回る。
そして、炎の形が巨大な刀を持った人の形になる。
一方が上段、もう片方は中段の構えで相対す。
先手は上段から一瞬で振り下ろす!
後手がそれを擦り上げ、先手の頭部へと刀を振り下ろす。
それを最小限の動きで右へと動きで回避した先手は、右袈裟、横薙ぎ、担いで左袈裟と剣筋で三角形を描き、最後に突きを後手の胸へと突き立てる!
胸に突きが刺さった後手は崩れ落ちおびただしい数の炎の蝶となり、消えていく。
1人残った先手は今度は徒手の状態で2人に分裂し、互いに構えを取り相対す。
先手が、後手の側頭部目掛けて蹴りを繰り出すが、後手はそれを屈んで回避しつつ足払いをかける。
先手はそれにあえて合わせ、空中で横に宙返りをしながら蹴りを出す。
それを片手で掴み、地面に叩きつけようとする後手、対して先手はそうはいかせまいと足を巻き付け後手の腕を折ってもぎ取り、自分の右腕にくっつける。
すると、先手の右手の大きさが増す。そのままその腕で砲弾のような突きを繰り出す。
後手にあたるかと思いきや、後手はその突きに跳び乗った。そして身体を萎ませたかと思うと、拳の大きさを超巨大にして突きを繰り出した!
先手はおびただしい数の炎の蝶となって消えていった。
後手は1人、礼をした後くるりと空中でとんぼ返りをし、ダンポに戻った。
「…。うおおおおおおおおおおおお!!!!」
一拍置いた後に観衆からの歓声が沸きあがり、至る所から小袋に包んだ金が投げられて来る。
一休があらかじめ発動しておいた空間幻影・収納の中に次から次へと、金が入ってくる。
暫くして観衆が落ち着いた後、一休はしたり顔で言う。
「100000妖銭はあるわね。ダンポご苦労さま。」
珍しく労いの言葉をかける一休。
「ふいー。やっぱり久しぶりにやると疲れるのう。炎舞は。」
それを聞いたアーリンとオイリーが目を輝かせて言う。
「お疲れ様です。ダンポさん!とってもかっこよかったです!」
「すげえな!ダンポのじっちゃん!」
「ん?そうか。照れるのう。」
「ほら、調子に乗ってないでさっさと次行くわよ。」
そうして、暗くなるまで街中の至る所で炎舞をやり続けたダンポと一行。
その夜は適当に見つけた小綺麗な宿に泊まり、一行は眠りにつく。
夜、同じ宿で月明かりに照らされて…。
彼らはひっそりと言葉を交わす。
「奴らは何をする気だ?」
「さあ?どうやら酒を買い占めたとか…。」
「酒……?一体何をする気だ?あの樹人族の爺は奴らにヨミノイザナギを解かれて改心してしまった。そのせいで、あの爺を殺すことになってしまったのは痛い。どうやったかは知らんが厄介な事だ。」
「まあこの街には神界の化け物も、あの方に改造されたあいつもいる。大丈夫だろう。フハハハハ!」
「しーっ、あまり大きな声を出すな。あいつはその事を知らんのだ。バレると面倒だ。」
「そういえばそうだったな。じゃあな。」
そう言って彼らは闇に溶け込み、消えていった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます