第14話 入郷!水戯郷!

水戯郷を囲う壁の近くまで来た一行。

近くまで行かないと分からなかったが、よく見ると液体が高速で回転して出来ていて、触るとすぐさま弾かれてしまう。

それを見たオイリーが言う。


「この壁は初代水王の御水神さまが作ったらしいぜ。いかなる物理攻撃、妖術も弾く、世界最強の防壁だ。この壁が何でできてるか、とかは全く分からないんだが、ここの住民は生まれつき緊急時には大抵この壁の液体を武器として扱えるように祝福されているんだぜ…。」


そうどこか物悲しそうに言うオイリー。


「で、どこから入るのかしら?オイリー。」


「ああ、そろそろ空く時間だと思うんだが…。」


次の瞬間一休たちの目の前の壁に穴が空く。


「うわっ!?」


「なんじゃなんじゃ」


「どういうことかしら?」


にかっと笑うオイリー。


「はっはっは!驚いたか!これが水戯郷の開門だぜ!時間になるとその日の開門担当者が壁の四方で開門の術を唱えて壁に穴を開けるのだ!」


中から門番が1人でてくる。


「水戯郷への入郷ですか?」


「ええ。」


「今回は何をしに?」


「主には観光ね。あの真ん中の塔を見たりとか、買い物とかを楽しむ予定よ。」


「そうですか!水戯郷は見ての通り、道が中心の塔に向かってかなり傾いています。私達液人族はそれを利用して、道を滑って行きたいところまで行くんですよ。少し待っていれば…、っと来た来た。」


説明してくれる親切な門番。そこへ、奇妙な形の船のようなものに乗った巨漢の液人族が現れた。


「よう、嬢ちゃん達。良ければこの船乗ってくかい?安くしとくぜ。」


「あらありがとう。ちなみにおいくらなのかしら?」


「ここからなら…、1人あたり…外周区なら500妖銭。内周区なら1000妖銭ってとこかな。」


「なるほどね。そういえば…さっき他の人達が、300妖銭で乗っていくのを見たけれど?」


そう言って一休は巨漢の液人族に近づく。


「はは、値引き交渉かい?嬢ちゃん。甘いな。嬢ちゃん達が今日最初の入郷者って事はわかってるんだぜ。」


「あら残念。」


「そういう訳で…きっちり3人分…ってあれ?」


「どうかしたのかしら?私1人で乗るわよ。」


そう言って、1人で乗り込む一休。


「そ、そうか。さっきまで連れがいたような気がしたが…。」


「気の所為じゃないかしら?」


「あ、ああ。そうだな?じゃあ嬢ちゃんしっかり掴まってろよ!」


そうして凄まじいスピードで走り出す船。どうなっているのか船から少し身を乗り出して船体下部を見てみると、水が下で蠢いている。と、その水が突然顔になる。


「どうした?嬢ちゃん。」


「うわっ!?…なるほど。貴方が船を抱えて下で滑ってるってことね。」


「理解が早いな。まあそういう事だ。で、嬢ちゃんはどこにいきたいんだ?」


「ああ、言ってなかったわね。この都で1番色んなものが買える所って何処かしら。」


「うーん、それならこの都最大の市場。水境市場なんかがオススメだな。他国からの物とかも沢山入ってきてるぞ。」


「じゃあそこでお願いするわ。」


「了解だ!飛ばすぜ!ウォラッ!」


そう声を上げてさらに加速する。周りの景色は全く見えない。速すぎるのと、曲がりくねった角を通ったせいでどうやって来たのかも分からない。


「到着だ!嬢ちゃんお代を。」


「はい、500妖銭。ありがとう。」


「毎度ありー。そうだ、この笛をやるよ。」


そう言ってどこからか、笛を取り出す巨漢。


「これを吹くと、俺の耳に必ず届く。また俺の船に乗りたくなったら気軽に吹きな!ガッハッハッハー。」


言い終わるとまた慌ただしく去っていった。

見えなくなったのを確認し一休は言う。


「悪いわね、おっちゃん。金は節約しないといけないのよ。幻包、解除。」


一休がそう唱えると、周りの景色が歪み、アーリン達が出てきた。


「罪悪感凄いですね…。」


「そうじゃのう。まあ、仕方ないのう。」


「…あいつらだし、別にどうでも良いんじゃないか?」


三者三様の反応を見せる、アーリン達。


「さて、随分と騒がしいわね。ここが水境市場らしいけれど…。」


色とりどりのテントがはられている水境市場。テント同士には、縄が張り巡らされており、その上を行き交うもの達もいる。その喧騒の中を慌ただしく、液人族だけでなく、他種族も多く行き交っている。


「それで、一休ちゃん。ここへは何を買いに来たの?」


「酒よ!」


『酒えええ!?』


「じゃあ、ありったけの酒をかきあつめに行くわよ!」


そう言って、酒屋を探して歩き出す、一休。


喧騒渦巻く大市場

そこに渦巻くは人の欲

渦巻く街の中央に、潜んでいるのは…。

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