第13話 オイリーとの邂逅

地面にベシャッとなったまま動かないナニカ。それを見た一休が言う。


「ダンポ、ちょっと声掛けてきなさい。」


「ええ、儂が…?嫌じゃよ怖いもん。」


「さっさといけ!」


そう言ってダンポをナニカに投げつける一休。

ダンポは空中で一回転して着地しようとしたようだが着地の時に滑って転んでしまった。


「おお、痛たたた。さてと、お前さん大丈夫かの?」


「メシをくれ…メシをくれ…メシをくれ…。」


「分かった、分かった。ちと待て。一休、カレェ1皿分くれ。」


「はい、これでいいかしら?」


「そうそう、さっきワシが食べてたこのカレェ…っておい!これ儂のカレェじゃん。」


「そうよ、何か文句でもあるのかしら。」


「大アリじゃろ…。まあ、しょうがないか。ほれ、こんなのでよければ食え。」


そう言ってナニカにカレェを差し出すダンポ。ナニカはそれを奪い取るようにとった。


「ありがとう、モギュモキュ…美味かった。」


「いや、食べるの速すぎじゃろ…。それでお主、名はなんという。」


「俺の名前はオイリー!液人族のオイリーだ!」


「で、オイリーよ。お主こんな森の中で何をしておったんじゃ?」


「お、おれは…最近知り合いが死んじまってな、そいつの墓参りに出かけようと思ったんだが、この森は異常に迷いやすくてな。食料も尽きちまって森の中を徘徊してたら、いい匂いがしたんで来てみたって訳だ。」


「アホね」


「アホじゃの」


「すいません。さすがにアホと言わざるを得ないです。」


一休たちは三人で口をそろえて言う。


「あれぇ?初対面とは思えない罵倒の嵐!?まあいいや、良ければ液人族の都まで案内しようか?」


「それは助かるわね、是非お願いするわ。でも今日はもう遅いから行くなら明日ね。」


「了解!じゃあ明日になったらまた来るぜ。じゃあな!」


そう言ってオイリーは嵐のように森の中へと消えていってしまった。それを見送り一休が口を開く。


「さて、今日は遅いしもう寝ましょうか。」


「うん。」


「そうじゃな。」


そして夜も更けてきた辺りで一休が口を開く。


「アーリン、起きてる?」


「…」


「寝てるみたいね。ダンポ起きなさい。」


「ん?なんじゃ?」


「さっきのあいつの話どう思う?」


「どの辺かは分からぬが、7割真実といった所じゃの。」


「まあ、そんなところよね…。液人族の都への案内は罠かしら?」


「五分五分じゃなあ。でも液人族の都へは行かざるをえぬじゃろ。」


「そう、厄介なことに用があるのよねえ…。」


「まあ、儂が一緒に居れば問題ないじゃろ。」


「確かにね。思う存分肉壁として活躍しなさい。」


「うーん、言ってることは確かにその通りなんじゃが…。言い方にそこはかとない悪意が…」


「さて、寝るわよ。」


「…。」


朝日が差し込む。最初に目を覚ましたのはアーリンだ。アーリンは朝ごはんの準備をし始める。いい匂いが漂い始めた辺りで一休とダンポも起きてきた。


「おはようアーリン。」


「おはよう一休ちゃん。ダンポさん。」


「お、朝飯を作っておいてくれたのか。助かるのう。」


「俺も食べたいぜ!」


「うわっ!?」


突然会話に参加してくるオイリー。


「あんた、どっから出てきたのよ。」


「へ?普通に森から出てきたぜ!」


「…。」


「じゃあ、朝ごはん食べましょうか。」


アーリンがそう言って4人分のご飯を用意する。


「今日の朝ごはんは、山菜の炊き込みご飯です!」


『おおー!美味そう!』


ハモる一同。それ程までに完成度の高い朝ごはんだった。


『いただきます!』


良い具合に炊かれた白米。ほのかな甘みを付けるのは種類豊かな山菜達。


「めちゃくちゃおいしいわね。」


「うますぎじゃろ。」


「超美味いぜ!」


「えへ、ありがとうございます。」


朝ご飯を食べ終え、片付けも終えた一同。オイリーが切り出す。


「そろそろ液人族の都へ向かうぜ!」


「そうね、そうしましょうか。」


そうしてオイリーの案内に従い着いていくこと10数分。少し開けた丘の上にたどり着く。


「あれが液人族の都、水戯郷すいぎきょうだぜ!」


そうして見えてきたのは不思議な形の都だった。都は壁に囲まれていて、都全体で逆円錐形をしている。中心に向かっていくつもの道が網目の様に張り巡らされており、その先には巨大な塔があり、塔の先端からは非定期的に何かが輝きながら飛び出している。こころなしか、都全体が朝日に照らされた露のように輝いているように見える。


「あんた達、なにか俺が体を隠せるようなもの持ってないか?俺は液人族の中では嫌われ者でな。都に入れない訳じゃ無いが、俺だとバレたらあんた達もきっと嫌な思いをしちまう。」


オイリーがそう言うので、アーリンが


「良ければこれを使って下さい。」


と言って、フード付きの外套を手渡す。


「おお、ありがとう!さて、それじゃあ行くとしますか!」


そう言って璧の方へと歩き出すオイリー。

その足取りは今までのものより重くみえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る