第9話 謝罪と前進
「お前、いやアーリンよ。すまなかった。」
「あ、頭をあげてください!突然どうしたんですか!?」
「教えてなかったと思うが儂の名前はラフール。お主の両親を殺し、儂のわがままでお主をこの宿に縛り続けた張本人じゃ。」
「……は?」
「長年騙し続けていてすまなかった。許されることではないが、謝らせて欲しい。本当にすまなかった。」
「え、どういう。私の両親、でも育てて?それは全て。いや、でもあなたのことですからきっとなにか理由があるはず。ですよね?」
「理由はお前を妻の代わりとなる都合のいい人形としたかった。ただそれだけだ。」
「そんな…理由で、私の父さんと母さんを?」
「ああ、そうだ。」
「ふざけないでください!そしたら私は父さんと母さんを殺した奴を何年も……。」
愕然とし、膝をつくアーリン。そして思い出した様にいくつか聞く。
「じゃあ、私を引き取ってくれたお姉さんと一緒に飴水堂に来ていた人を殺したのも?」
「儂じゃ。」
「宿屋で偶に起こっていた怪死事件の犯人も?」
「儂じゃ。」
「何を飄々と!私はあなたを絶対に許さない!何よりあなたを許してしまったら、私を引き取ってくれたあの優しいお姉さんにも申し訳が立たない!」
「ああ、最初から許して貰えるとは思っておらん。儂に出来ることはただ謝り続けることだけじゃ。」
「なぜ、今になって突然そんなことを?」
「それはじゃな。そこにいる小娘の影響じゃよ。」
「お客様の?」
ここまで静観していた一休が口を開く。
「ええ、私がこのゲス外道にこのまま死ぬまで行った時にどういう未来が待っているのか教えてあげたの。そしたら掌トルネードしやがって、アーリンに謝りたい、これから良いことをしていく、なんて言ってね。無様にも程があるわよね。」
「そんなことがあったんですか。で、あなたはどうするんですか?えーと、ラフールさん?」
突然ラフールに対して他人行儀になる、アーリン。これはあなたにはもう関わらないというアーリンなりの意思表示なのだろうか。
それに対し、ラフールは一瞬ショックを受けたような顔をしたがすぐに戻り、
「ああ、まずは世界を周り人助けをする。そして、それを儂が死ぬ直前まで行う。儂はあと、150年ほど生きられるようだから死ぬ直前になったら再びここに戻ってきてここに根を生やし死のうと思っておる。」
と言う。アーリンはそれを聞き棒読みではあるが、
「そうですか、頑張ってください。」
と絞り出す様に口にした。
それを見ていた一休はアーリンに問う。
「アーリン、あなたはどうしたいの?」
「私、ですか。」
言葉に詰まるアーリン。恐らくラフールの影響もあるだろうが、これまでに将来の事を考えた事はあまり無かったのだろう。
そこでラフールが口を挟む。
「儂が禁じて置いてなんだが、旅をしたいのでは無かったのか?」
「あれは…もう良いです。でも旅は良いですね。」
それを聞いて一休は1つ提案する。
「アーリンもし良ければではあるけれど、私と一緒に妖都まで行かない?みやこ男子とか、見れるかもしれないし、やりたい事も見つかるかもしれないわよ?」
「妖都ですか!それは良いですね!」
アーリンのその言葉は皮肉にもラフールの為に旅に出ようとしていた1度目の時の言葉とは正反対の意味が込められていた。
それを聞いたラフールが提案する。
「妖都まで送って行こうか?」
「嫌です。」
「断るわ。調子に乗るんじゃないわよ。あなたがしたことは死んでも消えないんだからね。アーリン、明日の朝には旅に出ようと思うから、それまでに準備とか挨拶とか済ませておきなさい。」
「わかりました、お客様。」
そうして各々身支度をしている間に昼を過ぎ、夜が始まる。
ここで解説
ラフールは飴水堂で移動できるようなことを言っているが、樹人族が皆同じ事ができるのかというと、そんな事はない。
これが実現可能なのは、
・飴水堂がラフールの体のカケラを使って作られていたこと。
・ラフールが飴水堂に対して強い思い入れがあること。
・融合してから100年以上という年月が経過していること。
の3つの要因によるものである。
また、移動方法としては飴水堂の床の、更に下に車輪または足の様なものを身体を変形して生成。それを使って移動する。
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