第45話 カミオの受難
大地の救済者カミオはテーブルに突っ伏していた。
「・・・つまんない・・・つまんない・・・つまんない・・・何なんだよ・・・」
朝からうわ言のように何度も何度も呟き続けている。
「うるさいわね。外に行きなさいよ。うるさくて邪魔よ。こっちが言いたいわよ・・・あんた、何なのよ!!!」
ソファーに座り、オレンジジュースを飲んでいた女魔人エキドナが怒り、カミオを睨みつける。
煌めくような赤い髪、美しく白い肌のエキドナが緋色の瞳で睨む。
「だってだって・・・みんな、期待はずれ・・・・魔人1号君はあっさりやられちゃうし、期待した阿黒羅王たちもあっさり負けちゃうし・・・ハァ〜・・・」
「あんたの研究材料をもっともっと投入すれば良いんじゃない」
「エキドナの研究を使えないかな・・・」
「いやよ!あんたのオモチャじゃないから、自分でやんなさいよ自分で。今回の件はあんたが始めたんだから、あんたの研究所で残っている魔人2号〜5号を使えば良いでしょ。それにまだ作成しているものを完成させて使えばいいじゃない」
「え〜っ・・・あれを使いたくないな〜」
カミオはとても渋い表情をする。
「知らないわよ、私を巻き込まないでよ。何ならカミオ。あんた自身を特別に私が改造してあげても良いわよ」
不気味にニヤッと笑うエキドナ。
「・・・・・」
嬉しそうな表情で女魔人エキドナが呟いた。
「魔人を改造したら、どこまで強くなれるか興味があるのよね。あんた私の研究に役立ちなさいよ。私があんたを改造して強くしてあげる・・・フフフフ・・・ああ・・・・凄いアイデアが次々に湧いてくる・・・いいわいいわ・・・そうよね・・・こうすれば・・いや、このほうが・・・破壊力が増える・・・いや、やはりこのほうが・・・」
「いや・・・流石にそれは・・・やめてほしいかな・・・自分のことは自分でできるし・・・」
一度だけエキドナの研究室を覗いたが、自分を超える恐ろしいまでの鬼畜ぶり。
鬼畜とは、まさに彼女のためにある言葉と思ったほどだ。
鬼畜オブ鬼畜。
彼女はまさに正真正銘のマッドサイエンティスト。
彼女を超えるマッドサイエンティストはいないだろう。僕でも無理だ。
「・・そうよね・・あんたを改造するとしたら・・・」
女魔人エキドナが不意にこちらに嬉しそうな顔を向けた。
「フフフフ・・・喜びなさい。あんたの改造プランが決まったわよ・・・まずその貧相な顔ね。もっと怖くてインパクトのある顔にしないと・・・あとは・・・おらゆる攻撃に耐えられるように、今の皮膚は全て剥がして、魔鋼金属の膜を移植して・・・・・口からドラゴンブレスを出したいわ・・・声帯もいらいわね・・・・・ああ、そうだ。髪の毛は全て抜いて、魔鋼金属を細く柔軟性を持たせたものを植え込むと良いわね・・・破壊力と防御力が上がる・・・」
女魔人エキドナは何度も何度も頷きながら自分のアイデアに酔いしれている。
まずい、まずい。僕を本気で改造する気になってきている。
皮膚を剥がす。
声帯をを取り除く。
髪の毛を全て抜く。
だめだ、身体中の冷や汗が止まらない。
「ああ・・・いいわいいわ・・・・もうゾクゾクしてきちゃう・・・たまなんない・・・早くやりたいわ・・・・・」
恍惚とした表情を浮かべるエキドナ。
「さあ、カミオ。私の研究所に・・・・」
カミオはすぐさま部屋を脱出。逃げ出した。
「逃がさないわよ。乙女をその気にさせて逃げるなんて許さないわよ」
“乙女“と“その気“の意味がおかしいように思うが、今はとにかく逃げることだ。
第一、そんなこと頼んでないし。
頼んででもいないことにその気になられても迷惑でしかない。
いくつものトラップ魔法陣を発動させ、追跡を妨害して全力で逃げた。
しばらく、自分の秘密研究所に籠ることにした。
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