第44話 魔王山ン本の怒り
「チッ・・・奴め逃げやがった。だが、俺から逃げ切れると思っているなら甘いな」
魔王山ン本は、金鬼バンコを追って空を飛ぶように走り始めた。
良宣は契約精霊魚座のアルとヴァンを呼び出した。
「アルは僕を乗せて山ン本さんを追って、ヴァンは付いてきて」
「「了解」」
黒色のシャチのアルに乗せてもらい、白色のシャチであるヴァンは並走して山ン本すぐ後ろを飛んで行く。
冬華も二人を追って走っている。
浜田室長は・・・当然空は飛べない。魔王山ン本や冬華のように超高速で走れない。
気がつくと、周囲に誰もいなくなり一人置いてけぼりとなっていた。
三人は付かず離れずの距離を保ち追いかけていく。
金鬼バンコは山間の朽ちかけたビルに入っていった。
「阿黒羅王様、大変です」
「おお、バンコか、お陰で我が封印が解けたぞ」
「そ・それ・・それどころでは・・・魔王が・・・魔王山ン本が・・・」
「ン?・・・」
その瞬間、阿黒羅王と金鬼バンコの隠れ家となっていた山間の朽ちたビルが、轟音と共に吹き飛んだ。
「ゴホッ・・ゴホッ・・・何んだ・・・何が起こった」
砂埃の舞う中、瓦礫の中から身を起こす阿黒羅王と金鬼バンコ。
「久しぶりだな。小僧」
「この阿黒羅王様を小僧だと、舐めた口を聞きやがって」
「ホゥ・・・自らを様付けか、随分偉くなったじゃないか」
「何だと!」
「そこのバカ鬼と同じで、1000年も経つとボケるのか・・・この魔王を忘れるとは・・・」
阿黒羅王は、山ン本の顔をしばらく見ていると顔から汗が滴り落ちてきた。
「・・・ま・・・まさか・・・」
「1000年前にボッコボコにタコ殴りしてやったのにまだ懲りないようだな」
阿黒羅王と金鬼バンコは、一瞬逃げようとしたそぶりを見せた瞬間、山ン本がパンチを一発だけ繰り出した。
その瞬間、阿黒羅王と金鬼バンコの後ろの山が轟音と共にえぐれた。
完全に固まる二人。
「お前達に特別に選ばせてやろう」
「・・選・・・・選ぶ・・・・?」
「そうだ!」
その瞬間、二人の背後に巨大な門が現れた。
「お前達に2つの道を選ぶ権利をやろう」
「2つの道?」
「そうだ。ひとつ目は俺の家来となって終生忠誠を誓う。二つ目はその地獄の門をくぐり地獄の奥底で永遠に過ごす権利だ」
すると地獄の門が少しだけ開いた。地獄の門の隙間からは数知れないうめき声、罵る声、叫び声、世の中を呪う呪詛のような声などが次々に聞こえてきた。
青ざめる二人。
「どうだ、お前達もあの声の主の仲間入りをするか!それも一つの生き様だ」
「・・あ・・・あの・・・3つ目は・・・?」
「貴様、舐めてるのか。3つ目なんぞ無い。あるとすれば貴様らの永遠なる終焉だ。だいたい、忙しい俺様の貴重な時間を無駄にした罪は重い。今日は特に忙しいんだよ」
「山ン本さん、今日何かありました?」
いつも暇そうな山ン本が今日は忙しいなんて何だろう。良宣は不思議に思った。
「今日はな、永楽堂の最新抹茶スイーツの発売日だ。この日は絶対外せないのに、貴様らのせいで・・・・・」
「良宣君、山ン本様は永楽堂の抹茶スイーツが大好きなの、最新スイーツ発売日は10時の開店に並ぶのよ」
冬華は良宣に訳を説明していた。
食い物の恨みが加わっているのか、それは恐ろしいな。
「さあ、選べ!」
徐々に地獄の門が開いていく。地獄の門からは無数の黒い手が伸びてきた。
その黒い手は、阿黒羅王と金鬼バンコの周囲に隙間なく溢れてきた。
「さあ、選べ」
「だ・・・誰が・・貴様に・・・・・」
「この金鬼バンコ、山ン本様に忠誠を誓います」
金鬼バンコはあっさりと阿黒羅王を裏切った。
「ちょ・・ちょ・・・どう・・どうゆうことだ・・・」
「も・・もう・・無理です。絶対勝てません。もう無理・・・無理無理無理無理無理・・・・・・」
信じられんと言わんばかりの阿黒羅王。
無数の黒い手が阿黒羅王に掴み掛からんとした時
「この阿黒羅王、山ン本様に忠誠を誓います」
思いっきり土下座する阿黒羅王がいた。
「ならば、忠誠を誓う呪印を授ける」
二人の胸に魔王山ン本の呪印が刻まれた。
「俺を裏切ると呪印が発動して無限地獄に直行になる。気をつけることだ。それと貴様らは今回悪さをしすぎだ。向こう100年人間の世界で無料奉仕を命ずる」
「「エッ・・・無料奉仕?????」」
二人の胸の呪印が光始める。
「「喜んでさせていただきます」」
すると光が収まった。
魔王山ン本が2回手を叩く。
するとどこからともなく百鬼の群れが現れた。
「新入りの二人だ。こいつらを連れて行け。そして無料奉仕活動をさせろ」
百鬼たちは阿黒羅王と金鬼バンコを掴むと連れ去っていった。
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