第42 話 怨形鬼ウラル再び
「クソ〜屈・・・屈辱だ・・・人間相手に逃げ出すハメになるとは・・・」
町外れの廃工場の地に怨形鬼ウラルは怒りをぶちまけていた。
倒産して、使われなくなり10年以上放置されてきた工場は、ところどころ壁に穴が開き、窓は全て割れ、トタン屋根は腐り穴が空いている。
「ゆっくりと贄を集めて、力を集めていこうと思ったが、こうなれば、全魔力を使い町中の人間を操り、人間の手で奴等を葬り、一気に贄を集めてやる」
全身からドス黒い力を漲らせ始めた怨形鬼ウラル。
その時、黄色い閃光が走った。
雷を纏った良宣の拳が怨形鬼ウラルの顔面を撃ち抜いた。
衝撃で吹き飛ばされ、廃工場の壁を突き破る。
「おっさん、そんな事されると迷惑なんだよね」
雷を纏ったまま仁王立ちの良宣。
瓦礫の下敷きになっていた怨形鬼ウラルは、瓦礫を吹き飛ばし立ち上がった。
「何をしやがるクソガキが」
「何を?・・当然鬼退治でしょ!」
「俺様を退治だと」
「1000年以上生きてると耳も悪くなるよね、特別にもう一回言ってあげるよ、鬼・退・治!」
「クソガキが舐めるな」
良宣に殴りかかるが、雷を纏った良宣は、軽やかなステップを刻みながら避けていく。
「クソ〜〜〜」
どう足掻こうが良宣を捉えることができない。
「ならば、秘術、欺瞞破鏡」
怨形鬼ウラルの姿が揺らめいたと思ったら次々に怨形鬼ウラルが増えていき、あっという間に良宣を取り囲む。そしてさらに増え続けている。
「ヘェ〜なかなか器用だね。分身の術かな」
「余裕があるのも今だけだ、遠慮なく死ね!」
怨形鬼ウラルが次々に良宣に殴りかかる。
良宣はかわしながら殴るが、次々にすり抜けていく。そして横から怨形鬼ウラル本体の攻撃が良宣に当たった。瞬間的に結界を張るが結界ごと吹き飛ばされる。
「フン・・・死んだか」
その瞬間、黄色い閃光が怨形鬼ウラルを捉えるがまたすり抜ける。
「なかなかしぶといガキだ」
「まいったな・・本体が分かんないな・・・」
「当たり前だ、貴様如きガキにこの欺瞞破鏡は破れん。時間が経てば経つほどに無限に増殖していく欺瞞破鏡の幻は、見破ることは不可能だ。大人しく俺様の贄となるがいい」
「死ぬのも、生贄もどっちもゴメンだ。ならばいくぞ、玖珂流陰陽術 睡蓮の陣」
良宣を中心に10mほどの光の睡蓮の花が咲く。母由佳の半分ほどの大きさではあるが睡蓮の陣が発動した。
良宣の周囲を7色の睡蓮の花が幾重にも周回し始める。
「小賢しい真似を、そんなものが一体何の役に立つか、今度こそ死ぬがいい」
睡蓮の陣を発動させた良宣に怨形鬼ウラルが殺到した。
殺到した怨形鬼ウラルが睡蓮の花に触れた瞬間、次々に消滅していく。
「何!!!」
「玖珂流陰陽術 睡蓮の陣。攻防一体の陰陽術ゆえ破ることは不可能。幻よ全て失せろ」
一斉に七色の睡蓮の花が周囲に乱れ飛ぶ。
睡蓮の花に触れた怨形鬼ウラルの幻は次々に消滅していき、そして最後に睡蓮の花に囲まれた1体が残った。
「クッ・・・何だこれは・・・」
「もはやそこから脱出することはできないよ」
「何だと・・・」
「そこは、次元の狭間の牢獄。もはや脱出は不可能だ」
怨形鬼ウラルが脱出しようとするが、弾かれて出ることができない。
「バ・・バカな・・バカなバカなバカな、この俺様が人間ごときの術に遅れをとるというのか・・・」
「人を完全に舐めきったその考えがあんたの敗因だよ・・・大人しく地獄の底で反省するがいい」
怨形鬼ウラルの周囲を回る七色の睡蓮の花が、一際強く光り始める。
「玖珂流陰陽術 睡蓮 太陽の陣」
白炎の光が激しく全てを飲み込んでいった。
そして、そこに残っているものは何一つ無かった。
「特別に地獄の底への片道切符だ。遠慮なく逝くがいい」
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