第40話 限界を超えろ
「あの〜これは何でしょうか・・・」
浜田室長は、冬華さんに『森の修了場で待ってます』と言われ、ルンルン気分でやってきた。
そこに、冬華さんと母、そして自分(良宣)を見て、戸惑っていた。
普通、この森の修練場に呼び出された段階でお察しだと思うのだが、そこに冬華さんが絡むと全て都合よく解釈してしまう。
「何とは?」
「冬華さんに呼ばれて来たんですけど・・・なぜ、二人がいるので・・・」
「なぜ?・・・修行の続きに決まってるでしょ!」
みるみる顔が引き攣っていく。
「あの〜本職はちゃんと有ますので・・・これ以上は必要ないかと・・・」
「大丈夫!大丈夫!本庁の許可は取ってある。しっかり鍛えてくれと言われてるから」
顔色がみるみる青ざめていく。
振り向きざまにダッシュで逃げようとしたが、振り向いた先に母さんの式神雷虎がいた。
雷虎と浜田室長の目が会った。
「ど・・どいてくれないかな・・・」
諦めろと言わんばかりに左右に首を振る雷虎。
「・・・・・」
「浜田さん!一緒に頑張りましょ!」
冬華さんが呼びかける。
「ハイ!!!」
冬華の呼びかけに元気良く返事をしてしまう。
浜田室長は冬華さんの笑顔を見て幸せそうだ。
一緒というがやるのは浜田室長なんだが!
「さあ、せっかく破邪の呪符を発動させることができるようになったんだ。発動させてみろ」
「エッ、浜田さん破邪の呪符を発動できるんですか!凄い!」
冬華さんの声援に、だらしない顔がキリとした表情に変わり。
「任せてくだい!」
渋くカッコつけた声で返事をして呪符を取り出し発動させる。
「浜田君、その状態を30分維持しろ」
「エッ・・・無・・無茶・・・・・・」
「凄〜い。30分もできるんですか。尊敬しちゃいます」
「・・・フッ・・・冬華さん任せてください。この浜田に不可能はありません」
次第に顔中から汗が滴り落ちてくる。
「・・・も・もう・・無・・・」
「浜田さん頑張って!!!」
「ハイ・・・大丈夫です。問題ありません!!!」
必死の形相で破邪の呪符を発動させ続ける。
そして、30分を超えた。
「あ・・あの〜・・・そ・そろそろでわ・・・」
「まだだ、限界を越えろ!私が良いと言うまでだ」
「・・エッ・・・30・・・」
「限界を超えていく姿はカッコイイ〜!です」
「カ・・カッ・・カッコイイ!」
涙を流す浜田室長
「冬華さんにカッコイイと言われた・・・・・カッコイイ・・・・・」
冬華さんの声援を反芻しながら声援の声を噛みしめるように感動している。
「任せてください。あなたの愛を胸に・・・漢、浜田どこまでも限界を超えていきましょう・・・ウォ〜〜〜」
感動のあまり絶叫をあげ、崩れかけていた破邪の呪符の発動が元に戻った。
そして、3時間が経過した時、突如破邪の呪符の発動が突如途切れた。
浜田室長がたったまま気を失ってた。
冬華さんが声をかけても反応は無い。
本当に限界を超え精魂尽き果てたようだ。
「いや〜すげえわ。破邪の呪符を発動できたばかりの奴は、普通10分も出来んぞ」
母さんがしきりに感心している。強引に限界を超えさせた人のセリフじゃ無いよね。
「こいつ、本当に人間か?初心者が3時間だぞ!良宣でも覚えたては30分が限界だったぞ」
人間には間違い無いです。ただ、疫病神に取り憑かれ、妖怪雪女に恋焦がれると言う部分だけが違いますけど。
「鍛え甲斐があるな。久しぶりに鍛えがいのあるやつだ」
仕切りに自分の言葉に頷く。
「冬華、また手伝ってくれるかい」
「この程度であればいつでも声をかけてください」
まだ、鍛えるつもりだ。いったい何と戦わせるつもりなんだろう。
立ったまま気を失っている浜田室長をこのままにしておけない。
どうしようかと思っていたら、雷虎が横にきて浜田室長を憐れむように見て、乗せろと言うようなそぶりなので、雷虎の背に乗せて帰ることにした。
冬華さんの『頑張って下さい』の一言でやる気MAXとなった浜田室長の修行は、恐るべき成果を出して終わったと同時に地獄の修行第二弾を終えた。
母も実に満足そうだ。
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