第39話 絶叫

「忌々しい陰陽師どもが!!!許せん」

阿黒羅王の怒りの絶叫が響き渡る。

「水鬼トウタの奴が陰陽師に倒されるとは・・・」

阿黒羅王が呟いた。

「あやつはいつも詰めが甘く、敵に付け入る隙を与えておりましたからな。やむを得ないことと思うしかございません。ですが、心配は無用でございます。所詮水鬼トウタは我らの中で最弱。水鬼トウタを倒した程度の陰陽師など我らの敵ではございません。それにまだ、この金鬼バンコと怨形鬼ウラルがおります」

土色の肌に3本角の鬼がそう呟く。

「その通り。水鬼トウタなんぞ最弱の鼻垂れ小僧にすぎん。水鬼トウタなんぞおらんでも何も問題ありませぬ。この怨形鬼ウラルに全てお任せくだされ、阿黒羅王様が1日も早く力を取り戻せるようにいたしましょう」

漆黒の2本角に漆黒の肌をした怨形鬼ウラルが力強く宣言する。

「フフフフ・・・頼もしい限りだ。・・・この忌々しい封印紋がわしの体に刻まれておる。これがある限り力を発揮できぬ。・・・体と魔力の2段階で封印を施しおって、忌々しい坊主と陰陽師どもめ」

金鬼バンコは目を細め

「多くの贄を集めれば必ずやその封印紋を破れましょう、今暫くご辛抱くだされ」

「ウム・・・頼むぞ」

「「ハハッ・・・」」

より多くの贄を集めるべく金鬼バンコと怨形鬼ウラルは動き出した。




地獄の修行(修行と言う名のシゴキ)を終え、浜田室長はダウンしていた。冬華さんの名を出してももはやピクリともしない。

完全に全ての精魂が尽き果てたようだ。

修行中、絶叫に次ぐ絶叫。さらに絶叫。倒れる度に冬華さんの名を出すと不死鳥のように蘇ること数知れず。

『漢、浜田!行きます』

叫びながら飛び込んでいく様は、まさに命知らず。

限界突破をしまくり、もはや寿命星も見えないのでは無いかと思う。

しかしその浜田室長は、その限界突破しまくっている最中奇跡を起こしていた。

なんと、破邪の呪符を発動させたのだ。

地獄の修行コースを丸1日行い、破邪の呪符を発動させたのだ。

全く陰陽師に関係ない人が地獄の修行コースで修行しても1日で発動は無理。

自分でも3日かかった。ダメな人はいくらやっても発動しない。

もしかして、浜田室長はとんでもない才能があるのではないか。

倒れている浜田室長は笑顔だった。

きっと楽しい夢を見ているに違いない。

そんな浜田室長に修行をつけた母も見ていた。

「随分幸せそうな寝顔ね・・・しかし1日で破邪の呪符を発動させるなんて、歴代一位の記録ね・・・」

「まさか、陰陽師の才能があるとは・・・」

「これは、使える」

母の目が怪しく輝く。

「エッ・・・使える???」

「そうよ・・・鍛えればものになる」

「・・・本職があるから・・・」

「そこは問題ないわ。上司たちに掛け合い、弱み・・・・・・・・・お願いすれば大丈夫よ」

黒い。黒すぎる。どんな秘密を握っているやら。

「・・そ・・そうですか・・・」

「後々の・い・・安全・・・・・社会の平和を考えたら私とお母さん(良宣の婆ちゃん)が頼めば絶対許可が出るわ」

母の最初に濁した言葉が気になる。

「鉄は熱いうちに打てというから、少し休みを与えたら次の用意ね」

本人の知らぬ間に地獄の修行第二弾が決定してしまった。

「流石に連続では、浜田室長も持ちませんよ」

「そうね、それなら冬華さんにも一度来てもらって一声かけてもらえるように山ン本さんにお願いしましょう。そうすれば後は熱心に修行してくれると思うから、きっといい結果が出ると思うわ」

「エッ・・・この森に入ってこれるの?」

「大丈夫。大丈夫。山ン本さんも冬華さんも理々姫は良く知っているから大丈夫よ」

「・・・・・」

まさに策士。恐るべし。

そして、次第に日が暮れていくのであった。

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