第34話 狂乱の宴の始まり
「どういうことなんだ。ここにこんな封印があるなんて聞いてねえぞ」
父の玖珂悠馬は、義父善一郎と息子である自分を連れ阿黒羅王の封印跡を訪れていた。
「わしもここに封印石があったとは初めて知ったわ」
圧倒的なまでの力で完全に粉砕された社。大きく抉り取られた大地。細かく粉砕された封印石。
「わざわざ封印石を地中に深く穴を掘り埋め、その上に社を立てる。できるだけ秘匿しておきたかった封印石なんだろうな。それだけ危険な存在だったてことだよな」
「本来ここを守っておったものも、長い年月の中で家系が絶えてしまい。そのため忘れ去られてしまったんじゃろう」
「あと、ここを中心に半径10数kmの範囲内で、全ての人々や動物が倒れてしまっている。これは異常だ。普通はありえん。ここで封印石を破壊した奴らは一体何をやったんだ」
封印石のあった周辺は全て破壊し尽くされて、原型を止めるものは何も残っていないため、証拠になりそうなものは何一つ残ってはいなかった。
「相当危険なものが封印されておったんじゃろう。現場に手がかりが無い以上、何が封印されておったのかは、陰陽師協会の古文書を調べるしかあるまい。協会にはすぐに調べるように話してある。今頃は総動員でやっておるじゃろう」
「オヤ・・・ねえ、あれを見て」
良宣が少し離れたところにある、半分崩れた狛犬を指差した。
半分崩れた狛犬の口に何か透明な球体が咥えられていた。
3人で近づいていくと、突如透明な球体が光り始めた。
光る球体から瞬間に距離を取る3人。
球体の光が空中に投射され、空中の光の中に一人の人物の姿が浮かび上がってきた。
「奴じゃ・・・奴が大地の救済者などと抜かすカミオと名乗った奴じゃ」
「ヤッホ〜皆さんお元気ですか〜!大地の救済者のカミオ君で〜す。僕は元気で〜す。皆さんは元気かな。きっと元気ないよね。ハッハハハハ・・・・・皆さんはきっと何が封印されてたかわからなかったり、多くに人がなぜ倒れたのかわかんないだろうな〜と思って、今回限りの特別サービスで教えちゃいま〜す。ここには、阿黒羅王と言う異形の妖鬼がいたのさ、昔々あるところに坂上田村麻呂というお偉いさんいてね、阿黒羅王と戦い、そして封印したのがここさ。阿黒羅王の性格はね、と〜ても残忍、残虐。特に弱い奴には容赦しないらしいのさ、すごいよね、もう考えただけでゾクゾクしちゃうよね」
カミオと名乗った男は恍惚とした表情を浮かべている。
「あっ、そうそう、たくさんの人が倒れたことも知りたいよね。封印石を壊すために未完成の術を使ったのさ。共振共鳴の働きを極大までに高めたんだけどね、使うと術者以外の周囲全てに悪影響を与えるのさ。その影響力は強力な力で放てば放つほど影響する範囲が広くなるのさ。それは命あるもの全てに影響を与える。激しい眩暈、倦怠感、頭が割れそうなほどの頭痛とかね。最初はこの問題点を治そうと思ったんだけど、よく考えたら周りがどうなろうとどうでもいいことに気付いたのさ。ハッハハハハ・・・・・インパクト抜群だろう」
そんなに多くの人が傷つくのが面白いのか馬鹿みたいに笑い続けている。
それに比例して爺ちゃんと父さんは怒りが込み上げてくるようだ。
自分もカミオという人物が話す言葉を聞いているだけで怒りと嫌悪感が込み上げてくる。
「僕がネタバラシしたから今頃必死こいて調べてる人の努力が無駄になっちゃうね。ご愁傷様。ハッハハハ・・・・この映像は自動的に消滅します。な〜んてね」
球体の光が急速に強くなって、そして爆発した。
「ふざけた野郎だ。探し出して必ずぶちのめしてやる」
父の玖珂悠馬の怒りに満ちた声が鳴り響いていた。
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