第33話 阿黒羅王《あくらおう》
街中の小高い丘にある鳥居をくぐり、苔むした石段を上がって行くと無人の小さな社があった。かなり昔からある社で、この地域の伝承では平安時代創建などと言われていた。
苔むした石段。申し訳程度の参道。石でできた苔むした狛犬。
社の建物自体は、朽ちてはいないがかなり傷みが出てきているようだ。
社の周囲は、かなり草が生い茂っている。
歴史ある社ではあるが、ここしばらく手入れはされていないようだ。
その小さな社の前に大地の救済者カミオの姿があった。
「やっと見つけた。ここか、こんな小さな社にしているとは見つからん訳だ」
右の拳を振り抜くと、拳圧で社が粉々になり、地面が抉れて土埃が舞いがる。
土埃が治ると抉れた地面に巨大な岩が埋まっているのが見えてきた。
岩の表面には、梵字のようなものが彫られている。
カミオがその岩に触れようと手を伸ばす。
バチッ!と音がして弾かれた。
「チッ・・・僕を弾くか・・・」
岩に向かい再び拳を振り抜く。
拳圧により激しく舞い上がる土埃。土埃が治ると何事もなかったように巨石があった。
覆っていた土が吹き飛び巨石があらわになってきた。
覆っていた土がかなり吹き飛ばされことにより巨石全体がハッキリしてきた。大きさは10mほど。巨石の表面には、隙間なくびっしりと梵字が彫り込まれている。
再び、触れようとすると梵字が淡い光を放ちカミオを弾く。
「この程度ではやはり無理か・・・かなり悪目立ちするが仕方ない。フラウロス、オセ手伝っておくれ」
背後に豹の頭を持つ獣人が二人現れた。
「お呼びでしょうか」
「巨石を破壊するのを手伝ってよ」
「この巨石を破壊すればよろしいのですか」
「この巨石に阿黒羅王と呼ばれる妖鬼が封印されている。この巨石を破壊して封印から彼を解放する。破壊したら、すぐに引き上げるよ。後は解放された彼が勝手に暴れてくれるさ」
フラウロス、オセと呼ばれる二人は巨石を挟むように立つ。
カミオは二人に直角になる位置に立つ。3人はアルファベットのTの字に立っている。
3人は巨石に向かい腕を伸ばす。3人の腕が淡い光を放ち始める。
「「「共鳴共振波動 レゾナンス ディストラクション」」」
共振共鳴波動により、巨石にどんどんひび割れが入っていく。
同時に、半径10km〜20km以内の術者以外の命あるものは、共振共鳴波動の余波を受けて激しいめまい、倦怠感、強い頭痛に襲われ立つことすら出来なくなる。威力を強めれば強めるほど遠方まで影響力を及ぼす。
既に、ここを中心点にして周囲の全ての命あるものは、動くことすらできず倒れ込んでいる。周囲の全ての車は、運転手が車を操作できなくなり、信号機、周辺の建物、止まっている車に突っ込んでいた。街中は、人々のうめき声だけが響き渡っていた。
巨石に次々にヒビが入り、やがて巨石のひび割れが全体に巡り、大きなビビ割れが入った瞬間、巨石が粉々に吹き飛んだ。
粉々に吹き飛んだ巨石跡には、3本の角を持ち、青黒い肌を持つ身の丈3mの異形の鬼がいた。
「フッ、ハッハハハハ・・・・・やっと、やっと出れたぞ。忌々しい坊主と陰陽師共め、奴らことごとく八つ裂きにしてくれる」
「やあ、久しぶりの世界はどうだい」
「俺を封印から出したのはお前か」
「正解!」
「ひとまず礼を言おう、助かった。・・・だが、何が狙いだ。俺様に何をさせる気だ」
「特に無いね。強いて言うなら、街中で好きなだけ暴れて、世の中に混沌をもたらして欲しいくらいかな」
カミオは、とても上機嫌であった。
「その程度でいいいのか・・・そのくらいのことは造作もない・・・その前に手下どもの封印も解除しなきゃだな」
「後は任せるよ。好きなだけ暴れるといい」
カミオたち大地の救済者は阿黒羅王を残し姿を消した。
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