第31話 聖炎
画廊山ン本で騒動があった同時刻。
森の中の修練所にて玖珂悠馬と良宣親子が修行をしていた。
良宣は父に言われた通り、炎のイメージを固め、自在に炎を操る訓練を朝から続けていた。
竜の形、魚の形、鳥の形とさまざまな形をイメージして、炎を作り出していた。
そして、いよいよ青い聖炎を作り出す訓練に入っていた。
「ダメだ、ダメだ。もっと霊力を込めろ。全く足りんぞ」
「ハイ・・・」
霊力を込めると、炎がコントールできない。
「炎が乱れてるぞ・・・どうしたしっかりコントロールしろ」
「ハイ・・・」
「聖炎がただの炎になってるぞ!どうした、イメージを固めろ・・・霊力を込めてコントロールしろ」
「・・ハイ・・・」
「何をやってる!しっかりイメージしてコントロールしないと、自分の身を焼きつくぞ」
何度も父さんに叱責なれ、どうにか青い聖炎を作り出す。
「よし、その青い聖炎を小さくともいいそのまま維持しろ・・3分間維持しろ」
とてもキツイ。少しでもイメージ・霊力・コントロールする力のバランスが崩れるとたちまち聖炎がただの炎になってしまい、自分の身に炎が襲いかかってくる。
何度も失敗して既に腕に何箇所も火傷を負ってしまっっている。
「そのまま・・・いい調子だぞ・・・3・2・1・よし、終了」
炎を消して、その場でへたり込んでしまう。
「一応合格だ。3分間維持できれば、実戦では聖炎を短時間だけ使用するようにすれば、瞬間的な出力をもっと高められるだろう」
「ハイ」
人の気配がしてそちらを見ると婆ちゃんこと玖珂沙織がいた。
「なかなかいい出来じゃないか」
「婆ちゃんありがとう」
「疲れているところで悪いが、急遽やってもらいたいことができた」
「やってもらいたい事?」
「山ン本のところから魔物が3体逃げ出した。こちらに向かって逃げているらしく、山ン本も追っているが、手が空いていたら手伝って欲しいそうだよ。良宣の実戦を経験させるいい機会だ。二人で行っといで」
「ホ〜・・珍しいですね。山ン本さんのところから逃げるなんて。普通不可能でしょうに!」
「そこんところは、後で聞くしかないよ。頼んだよ」
二人で気配をだどり走っていると前方から強大な悍ましい気配がしてきた。全身から冷や汗が吹き出してくるようなそんな悍ましさだ。
父さんは走ることをやめ、立ち止まる。
「ホ〜・・地獄の門を開けたようだ。これはこちらの出番はないかな」
「地獄の門?」
「そうだ。山ン本さんの十八番。実際に地獄の門を開けて、直接地獄に送るのさ」
「エッ・・・そんなこと無理でしょ」
「それが、山ン本さんなら可能さのさ」
「山ン本さんて何者なの?」
「まあ、簡単に言うと魔王だ!」
「ハッ?魔王???」
「十三人いる魔界の王の一人。数少ない人間との共生を考えてくれる魔王さ。おや、こちらの分を残してくれてたようだ。良宣!準備しなさい」
前方から何かが迫ってくる気配だ。
霊力を青き聖炎に変え構える。
森の中から四目六腕の獣身で鋼鉄の牛の頭をもつ化け物が現れた。
「ホ〜・・古代中国で言うところの
「ヴォ〜〜〜」
蚩尤はこちらを目掛けて突っ込んできた。
「良宣!」
「ハイ・・・聖炎滅魔!」
良宣の背後の燃え立つ青い聖炎から数羽の青い炎の鳥が飛び立ち、蚩尤に襲い掛かる。
「霊力が足りんぞ!もっと霊力を込めろ!今やらんでいつやるんだ!限界を越えろ」
父さんの声に、青い聖炎に込める霊力をコントロールできる限界を超えて注ぎ込む。
青い聖炎は倍の大きさになり、多くの青い炎の鳥が次々に飛び立ち、蚩尤を焼き尽くしていき、やがて蚩尤はその姿を燃やし尽くし消え去った。
「よし上出来だ!さて、山ン本さんに挨拶しますか」
父さんが歩き出したので後をついていく。
目の前に父さんより少し年上に見える男の人がいた。
「久ぶりですね。山ン本さん」
「悠馬、撃ち漏らしを片付けてもらってすまなかったな」
「いえいえ、今回は息子の良宣の良い経験になりました」
「息子の経験?まさか、先ほどの聖炎滅魔は・・・」
「はい、良宣が放ちました」
山ン本と呼ばれた人は、しばらく自分をマジマジと見ていた。
しばらくすると、ニカと笑った。
「悠馬、こいつなかなかいい霊力を持ってんじゃねえか」
「将来有望ですよ。しかし、山ン本さんが相手だと相手が可哀想ですね。なんせ、地獄の底に直接送られてしまいますからね」
「俺は、敵対する奴には容赦しないからな。今回は助かった。後でうまい酒を送っておく」
「期待してますよ」
「坊主、頑張れよ」
そう言い残して魔王山ン本は夜空を駆けていった。
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