第27話 炎の化身
父さんと警察官で父さんの後輩の浜田さん、そして自分の3人で怪しい気配の路地に入る。
路地裏に入ったのに、広い空間が広がっている。
すぐさまへびつかい座の精霊アクレピウスを呼び出す。
「ウォ〜!何だ〜!・・・人が湧いてきた・・・」
浜田さんが突如現れたアクレピウスに、驚きの声を上げ路地の壁側に飛び退いた。
「心配しなくて大丈夫です。僕の式神のアクレピウスです」
「浜田様、アクレピウスと申します」
疲れて眠そうな目が大きく見開かれ驚愕の表情をしている。
「話せるの・・・」
「はい!」
「強いの?」
「それなりには!」
「これなら俺、いらないですよね。帰っていいすか!」
浜田さんが父さんを方を見る。
「ダメだ。今帰ると職場放棄で始末書になるんじゃないか」
「この際です。始末書を書いて部署移動ですよ」
「なるほど、そんな手段があるか・・・そんな浜田君にBIGなお知らせだ!」
「・・・今まで、先輩が俺を君付けで呼ぶときはロクなことが無いですけど・・・・・」
「近々、警察内に新しい部署が立ち上がる。特殊事案課。別名:陰陽師課だ。初代室長は浜田。お前だ!!!」
「聞いて無いですよ・・・」
「そりゃそうだ。俺もついさっきここにくる前に聞いたばかりだ。数日前に警察から上層部から婆さんと由佳に相談が来たらしい。その時、由佳が浜田を推薦したそうだ。そしたら、それがそのまま通ったそうだ。いや〜異例の大出世だな。と言うわけだ、記念すべき初出動だ。初代室長殿よろしくな!」
「なんで、由佳の姉御が俺を推薦するんですか、俺はめっちゃ陰が薄いはずだから俺のことなんてほとんど覚えて無いはずですよ。合コンに行っても、いるのに最後まで気づかれなくらい陰薄いんですよ。何でですか!」
浜田さんのそんな幸薄いカミングアウトが可哀想になる。
「スマン!・・・由佳が俺に誰かいないかと聞いてきた。俺の知り合いの警察関係は、浜田しかいないから浜田の名を出したら、それがそのまま通ってしまった」
「結局原因は先輩じゃないですか!!!」
「浜田、お前が由佳に意を唱えることが出るなら言ってもらっていいぞ!発言権が1ミリも無い俺には無理だ」
「先輩が無理なら、俺はもっと無理ですよ〜」
そんな二人のやり取りをする先に赤い髪を膝まで伸ばした女性がいた。
どうやら、この路地の事件の元凶らしいが、おそらく二人のやり取りが終わらないため声をかけそびれてるのかな。
『アクレピウス、あの人が元凶だよね』
『その様ですが、お二人のコントが終わらなため声をかけそびれてるみたいですね』
「ダメだ・・・・・過労死の未来が見える・・・空に過労死の星が輝いている」
「頑張れ浜田!お前ならできる。お前はできる子だ」
「無理・・・無理です・・俺には無理・・・」
「お前ら、いいかげん私に気づけ!こっちは気をきかせて待ってんだぞ!!!」
赤い髪の女がついにキレた。
『キレたね』
『とうとうキレましたね』
「うるさい、こっちは俺の未来がかかってるんだぞ」
浜田さんが赤い髪の女にキレる。
「浜田さん、あの人が元凶じゃ無いですか」
良宣が指差す方を見る。
怒れる赤い髪の女がいた。
「「・・・あんた誰・・・」」
「貴様ら・・・さっきからくだらんコントばかりやりやがって・・・」
赤い髪の毛が空中に浮かび始め、そして浜田さんを睨む。
「私を無視すんじゃないよ・・・どれだけ待ったと思ってる・・・恐怖で彩られるはずの私の登場をお前らのくだらんコントで染めんじゃねえよ!!!」
「お・・・俺の存在が女性から認識されている・・・」
「浜田!記念すべき日だな。今日を浜田記念日と名ずけよう」
「合コンに行っても最初から最後まで空気扱い、署内でも同僚女性からは空気扱いされるのに、今俺の存在が認識されている!!!」
「・・・・・・・・・・」
『人でなくても女性ならいいのか』
『この際、いいんじゃありませんか』
良宣とアクレピウスは、何せずしばらく放置することにして様子を見ていた。
「俺の存在が認識してもらえるなら、3日後の合コンに希望が持てる」
「希望の星が見えたじゃないか」
「貴様ら、馬鹿にするのもいい加減にしろ」
赤い髪が二人に襲いかかってくる。
父さんの体から炎が発せられた。
「来い、極炎」
発せられた赤い炎は巨大な鳥の姿となり、赤い髪を焼き尽くしていく。
その炎は赤い髪の女を飲み込んだ。
「ハッハハハハ・・・いいねいいね。久しぶりだよこれほど高ぶるのは」
炎は女に何一つ傷を与える事なく消えた。
壁に赤い髪でぐるぐる巻きにされた3人の子供たちが浮かび上がる。
「炎の魔人アミィに炎は効かないよ。さんざんコケにしてくれた分、しっかりとチリひとつ残さぬように燃やしてあげるよ」
「その前に、その子達はどうするつもりなんだ」
「心配いらないさ、私が大事に使ってあげる予定さ。人の姿でいられかどうかはわからないけどね。ハッハハハハ・・・・・」
アミィと名乗る女の背後から巨大な8つの炎の蛇が現れた。
「燃え尽きろ」
8つの炎の蛇が父さんを飲み込んだ。
「さあ、次はお前らだ」
「ぬるいな・・・ぬるすぎる!」
炎の中から父さんの声がする。
「何・・・・・」
「こんなぬるい炎じゃ、何ひとつ燃やせやしないぜ」
「舐めるな、燃やせ燃やせ燃やせ・・・・・・」
次々に炎の蛇が襲いかかっていく
「言ってるだろ、ぬるい、お前の炎はぬるいんだよ。こんな炎じゃ俺の身体も魂も燃やせないぜ」
驚愕の表情で後退りしていくアミィ。
「全てを燃やし尽くし浄化する本当の炎を教えてやろう」
巨大な赤い炎の鳥は巨大な青い炎の鳥へと変わる。
「玖珂流陰陽術 聖炎滅魔」
巨大な青い炎の鳥から青い炎の小鳥たちが無数に湧き出しアミィを囲み。そして青い炎に包まれる。
「なぜだ、消せない。炎が消せない」
「言い忘れた。その炎は邪悪な力を掻き乱し、そしてその邪悪な力を喰らい尽くすまで消えん。つまりその炎に捕まったら悪き魔術、悪き呪術の類は使えなくなる。己の業の深さを噛み締めて逝くがいい」
「ウォ〜・・・貴・・貴様・・・クソ〜・・・」
全てが青い炎に燃やし尽くされると、路地裏が野原に変わり、赤い髪に縛られていた子供達は解放されていた。
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