第25話 白いお皿
「良宣君、頼みがあるんだ」
深刻な顔をして同級生の新川史郎君が話しかけて来た。
ぽっちゃり系の体型でいつも陽気なのに、深刻な表情だ。
「良宣君の家は陰陽師と聞いたんだけど本当?」
「ウン・・・確かにそうだけど」
「助けてほしいんだ」
「助けてほしいって?どうしたの・・・」
「出るんだ・・・」
「出るって?」
「お化け・・・・・」
俯きながらゆっくりと話す。
「学校の帰りにお皿を数えている女の人に呼び止められるんだ。そしてお皿が足りないと言って僕を見てス〜と消えるんだ。怖くて怖くて、ご飯も喉を通らないんだ」
体はどう見ても健康そのもに見えますけど、それより痩せた方がよくないか。
「夕飯は大好きなカレーが以前は大皿に大盛りで5杯は行けたのに、今じゃ2杯が限界なんだ。お母さんも少食すぎると心配してるくらいなんだ」
いや、普段が食べ過ぎでしょ。いまが少し多いかもしくは普通じゃないの。大皿2杯で少食っておかしくないか?
健康のために今のままがいいじゃないかな。
きっとそのお化けがいたら彼は健康になるんじゃないかな。
新川君は深刻そうな表情のままだ。
「じゃ、いつも新川君が帰る道を僕が通ってみるよ、今日はいつもと違う道で帰ってみたらどう」
「・・・・ウン・・頼むよ・・・」
新川君と別れて、新川君からいつもの帰り道を聞きその道を歩いてみることにした。
周囲をキョロキョロしながら歩いていると女の人にぶつかってしまった。
「ごめんなさい。大丈夫ですか」
女の人は俯きながらお皿1枚足りないと呟き、白いお皿を持っていた。
「エッ!ごめんなさい。ぶつかった拍子に割っちゃったか・・・」
女の人はうつむいたままだ。
「1枚足りない・・・」
不味い、どうしよう、どうしよう。
「そうだ。ヴァリノス」
「は〜い。何〜」
魚座の精霊ヴァリノスの特技に簡単なものならそっくりなものを作り出せる特技があった。
「ヴァリノス、この女の人が持っているお皿と同じものを1枚作ってよ」
「そんなこと簡単、任せて」
ヴァリノスの右手が光ったと思ったら右手に白いお皿があった。
「ありがとう、助かるよ」
ヴァリノスからお皿を受け取ると良宣は女の人に渡す。
「これで、全部揃いましたよね、よかった」
「エッ・・・い・・いや・・・ウラメシ・・・」
「エッ!裏飯屋さんを探してるんですか」
驚いた表情をする良宣。
「お姉さん、通だね。裏飯屋さんは、地元の人しか知らない名店なんだよ。安くて美味しいお店なんだ」
「・・ウラメシ・・・」
「そうなんですよ。お店の名前は竹田家だけど、裏通りのご飯屋さんだから地元の人はみんな裏飯屋と呼ぶんだ。ちょうどここの裏側だよ。そこの路地を入るとすぐだよ」
「・・・・・」
「先を急ぐから、お姉さん、じゃあね。裏飯屋はすぐそこだからね」
走り去っていく良宣を見ながら、女の人は笑顔を見せて消えていった。
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