第24話 大地の救済者
離れたところで,魔人と由佳の戦いを見ているものがいた。
「あちゃ〜,ダメだったか,まあ最下級の魔人なんてこんなもんか」
細身で黒髪を肩まで伸ばした男は,残念そうな表情をしている。
「何がダメだったのか教えてくれるかい」
男の背後から女の声がした。
男が驚いて振り向くとそこには,玖珂沙織が立っていた。
「おやおや,こんな離れた場所にわずかな時間で移動できるなんて,一体どんな手品を使ったなんです」
「そいつは企業秘密てやつさ」
沙織と向き合う男の背後から別の男の声がした。
「貴様の目的はなんじゃ・・・」
慌てて横に飛び退き,声の方を見ると厳しい目つきの玖珂善一郎がいた。
「これはこれは,破壊神に絶対者。ご高名なお二人が揃っておいでとは,あまりの熱烈な歓迎に涙が出そうです」
男は,涙を手で拭うようなフリをして,戯けるように話す。
「せっかくですから,名前を名乗らぬのも失礼でしょうから自己紹介いたしましょう」
男は軽く会釈した。
「大地の救済者のリーダー。カミオと申します」
「大地の救済者?」
沙織の声に頷くカミオ。
「そうです,大地の救済者です」
「その大地の救済者は何をしようとしている」
「ウ〜ン。ご高名なお二人がいらしたのですから特別サービスですよ」
バカにしたような笑いを浮かべるカミオ。
「人間はこの地球を汚しすぎています。そして破壊しすぎています。ですから新しい世界を作ろうと考えています。簡単に言ってしまえば,魔人だけの世界に作り替えるでしょうか・・・」
善一郎は,カミオと名乗る男に逃げられないようにゆっくりと立ち位置を変える。
「そんな馬鹿な事ができると思っているのかい」
「できるもできないも,先ほどご家族と戦っていた男は,元々何お取り柄も無いただの人間。秋葉でスカウトして,ちょいちょいと僕がいじってあげたら,あ〜ら不思議。最下級ではありますが魔人の力を振るえるようになりましたとさ。これって凄いと思いません。自分が天才すぎて,自分の才能に思わずうっとりしてしまいます」
恍惚とした表情を浮かべるカミオ。
「もう少し実験をして大量生産しようと思っていますよ」
「そんな真似させんぞ!雷撃呪」
善一郎の雷撃は,カミオに当たる寸前で見えない壁に阻まれた。
「いきなり攻撃なんて,野蛮ですね。もう少し穏やかに行きましょうよ」
「結界か・・・」
「先ほどのご家族の方がお使いのものとは少し違いますが,なかなかの自信作ですよ」
「なら,その結界ごとぶち壊すまで・・・雷装雷撃呪」
雷を見に纏い,一瞬で懐に飛び込み雷の拳を繰り出す。
だが,当たる寸前で見えない壁に阻まれる。
すると一瞬で背後に回り雷を纏った蹴りを繰り出す。
しかし,これも見えない壁に阻まれる。
「ハッハハハハ・・・無駄無駄無駄・・・・ハッハハハハ・・・」
そこに飛び込んできた玖珂沙織が炎を纏った右の拳を繰り出した。
炎の拳は,壁に阻まれる事無く,カミオの腹に直撃した。
殴り飛ばされ転がるカミオ。
「・・・バッ・・バカな・・攻撃が壁をすり抜けただと・・・」
呆然とするカミオに襲い掛かる沙織。
今度は,炎を纏った蹴りが炸裂して,大きく跳ね飛ばされる。
「・・うぐっ・・・まただ・・なぜ・・壁をすり抜ける?どんな手品を使ったんです」
「そいつも企業秘密さ」
「これが絶対者と呼ばれる秘密ですか?・・・まいったな〜。突然旗色が悪くなっちゃったな・・・」
頭をかきながら困り顔のカミオ。
「おっと,逃がさないよ」
逃げ道を塞ぐようにカミオを挟み込む二人。
「もう少し遊んで絶対者の秘密を暴きたいところですが,どうやらお時間のようです。心残りではありますが失礼させていただきます」
突然,カミオの足元が円形の光を放ち,光が収まるとカミオは消えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます