第22話 封印の地
「封印の地?」
「そう,封印の地さ。聞いた事は無いかい」
良宣は首を横に振る。
「ガレル!まだ教えるには早い」
「沙織ちゃん,教えても問題ないだろう。良宣くんも玲奈ちゃんも関わりを持ってしまっている。それなら,知っておくべきだろう」
玖珂沙織は渋い表情をしている。
「いいかい,この世界には,何ヵ所か封印の地と呼ばれている場所がある。封印されているものはそれぞれ違うが,その地域の魔術師などが管理している。日本なら陰陽師になる」
「何を封印しているのですか」
「ここに封印されているのは,巨大な魔界の門。高さが20mにもなる巨大な門だよ」
「巨大な魔界の門?」
「そう,巨大な魔界の門。この国の戦国時代に,戦で死んだ多数の人々の魂を贄にして魔界の門を作ろうとした連中がいてね,あれは焦ったよ。なんとか完成寸前で封印できたんだけど危なかった」
「なんか,実際その場にいたような話しぶりですね」
「話しぶりも何も実際封印したのは私だよ」
「エッ・・・」
「正確に言うと,当時の陰陽師たちと協力したんだけど,中心となったのは私だよ」
「でも,元々この国にはいなかったですよね。一体いつからこの国に・・・」
「魔界の門の封印に来たときだよ。理々姫から巨大な魔界の門が出来つつあるから,出来上がる前に封印して欲しいと依頼されたからね。その時にフレイヤと共にこの地にやってきたんだ。君のご先祖様にも会ったよ!封印の時に協力してくれたんだけど,なかなかいいやつだったよ」
「うちのご先祖ですか・・・」
「玖珂鳳仙と名乗っていたね。彼も理々姫の神託によってここにやって来た一人で,何も聞かされず,訳を聞いても答えがなく,繰り返しただ行けと言われたから仕方なく来てみたら,目の前に巨大な魔界の門があって完成目前の状況で,邪悪な波動を撒き散らしていて,しかも自分一人しかいない状況で途方に暮れたていたね」
「鳳仙殿が途方に暮れているところに,ガレル様と私フレイヤが到着。安倍家と道摩家からも陰陽師が到着。皆で協力して封印に成功という訳です」
戦国時代中期
陰陽師玖珂鳳仙は,神託を受けた。とある場所に行くように神託が降りたのだ。
邪霊ではなく,神からの神託に間違いないのだが,理由がわからない。
なぜ,そこに行く必要があるのか,何があるのか,いくら訳を聞いても答えは無い。
朝から何時間も訳を尋ねても帰ってくるのは
『行け』『行け』『行け』『行け』『行け』・・・・・・・
「・・・ハァ〜!わかりましたよ。行きますよ・・・行かせていただきます」
普通,直接理由の説明がなくとも眷属がおいでになり説明してくれるのだが,それすらない。やな予感がする。きっと碌でも無いことが待っているに違いない。
渋々旅支度をして,言われた場所に向かうことにする。
近づいていくに従い,邪悪な気配がしてくる。
更に近づくに従い邪悪な気配がどんどん強くなっていく。
20歳で玖珂家の当主にされてしまい,日々怪しげなものたちとの戦いに明け暮れている。
代々陰陽師の家であっても,元々陰陽師になんかなりたくも無かった。
怪しげな奴らと戦うなんてごめんだ。
何度親父に訴えても,今お前ほどの才能のある使い手はいない。
そう言って話を聞いてくれない。
「お前が今日から玖珂家当主だ」
親父はそう言い残し,ポックリと大往生してしまった。
帰りたい。帰っちゃダメかな。もう帰ろう,帰って良いよなと考えていたら
『行け』『行け』『行け』『行け』『行け』・・・・・・・
「・・・・・ハァ〜。行きます。行きますよ・・・・」
そんなやり取りを何度も繰り返しながら目的地に到着した。
そして,今目の前に巨大な門が立っている。
漆黒に塗り潰され縦横ともに10
強烈なまでに邪悪な気配が押し寄せてくる。
破邪の護符を使い身を守る。
白銀の光が体を包み込む。
漆黒の門を見ていると何かを吸い込んでいるようだ。
遠見の護符を使い何が吸い込まれていくのか見てみる。
人だ!人が吸い込まれていく。いや,正確には,人の魂だ。
戦乱で死んだ人の魂を吸い込んで巨大化しているようだ。
全身から嫌な汗が吹き出してくる。
こんなものどうしろと,封印しろという意味なんだろうけど,こんなもの無理だ。
無理無理無理無理。絶対無理。帰ろう,俺一人では無理だ。絶対に帰る。
帰ろうと後ろを振り返る。
そこに,4人の人物がいた。気配すら感じさせずいつの間に。
二人は南蛮人のようだ。しかも女性だ。その背後には,同い年の安倍家の当主と道摩家の女当主がいた。
「君が玖珂鳳仙かい」
南蛮人の女がいきなりこの国の言葉を流暢に話し始めた。
「・・・・・・」
「ガレル様,きっと私たちの美しさに見惚れてしまっているのですよ」
話す言葉に何か術のような力を感じる。
「・・・あんた達は何者なんだい,どうしてここにいる。なぜ俺を知っている。それになんでそんなにこの国の言葉を流暢に話せる」
二人はジッと自分を見つめている。
「ホゥ・・・なかなかの使い手のようだ。理々姫が陰陽師の腕利きを3名寄越すと言っていただけはあるようだ」
「エッ・・・あんた達神託で来たのか!」
「そうだ,私はガレル。君ら陰陽師と似たようなものだ。それとなぜ話せるかというと,どんな言葉でも話せる,そうゆう術を使っていると考えてくれ」
「私は,ガレル様の従者フレイヤと申します」
「他にいるなんて聞いてないよ。あとは全て任せて帰っていいかな・・・」
玖珂鳳仙の疲れ切ったような表情で呟いた。
「ホゥ・・・それはかまわんが,神託に逆らうと後が大変じゃないか?」
ガレルは呆れたように呟く
「ウグ・・・ハァ〜・・・わかりましたよ。やりますよ。やれば良いんでしょ・・・行けば分かるとしか言われてないんだが・・・」
「才能はとびきりだが,とんでもなくビビりだから,詳細を伝えたら絶対引きこもって出ないだろうから,詳細を言わずにただ行けとしか神託を出さなかったと聞いたが,どうやら本当のようだな。あんた達はどこまで聞いている」
ガレルの問いに
「安倍吉親と申します。神託でお二人のことも含め詳細は全て聞いております」
「道摩胡蝶と申します。吉親と同じく神託にて全て聞いております。それと鳳仙はビビリですが腕は確かです。追い詰められないと動かない奴ですから,まあ仕方ないかと」
「・・・ビビりで悪かったな・・」
安倍吉親がビビって顔が引きつている鳳仙の方を向く
「鳳仙。その性格をなんとかしろ。お前の才能は群を抜いている。それは陰陽師に関わるものが全員認めている。自信を持て」
逃げられないと観念したのか鳳仙はガレルに問いかける
「・・・封印はどうする・・・」
「五芒星の陣を使い封印を行う,それぞれが五芒星の一角に立ち,襲いくる亡者どもを打ち払いながら封印術を行う。封印の依代にはこれを使う」
ガレルは,長さ30センチほどの純銀の杭を取り出した。よく見ると細かく紋様らしきものが彫り込まれている。それぞれ1本づつ手にする。
驚く一同。細かい紋様らしきものは,見たこともない呪印らしきものだ。
手にした瞬間から淡い光を放ち始める。
「これを,地面に刺し,霊力を込めれば封印術は発動する。完全発動させるにはかなりの霊力を込める必要がある。更に同時進行で湧いてくる亡者も相手にしなければならない。できるかい」
「問題ない」
安倍吉親の言葉に同意して頷く陰陽師の3人。
「皆が動きやすいように,陽動はこのガレルが受け持とう」
地面に魔法陣が浮かぶ上がる
「召喚,聖龍レッドドラゴン!!!」
魔法陣から,翼を持った7つの首を持つ巨大な赤龍が現れた。
「「「なんと・・・赤龍・・・」」」
「さあ,戦いの始まりだ」
ガレルの言葉にすぐに我に帰り,皆それぞれ所定の場所に走り出す。
地面から次々に湧き上がる亡者の群れがゆっくりと進んでくる。
ガレルは,銀の杭を地面い刺す。
「聖なる炎で亡者達を浄化せよ」
聖龍レッドドラゴンの7つの頭が吐き出す聖炎が亡者達を飲み込んでいく。
そして魔界の門周辺を聖炎が包み込む。
ガレルは,亡者をドラゴンに任せ,銀の杭を発動させる。
光の柱が立ち上がる。
フレイヤ,安倍吉親,道摩胡蝶が銀の杭を発動させ,光の柱が立ち上がる。
玖珂鳳仙が銀の杭を発動させようとした時,聖炎の壁に身を焼かれながら向かってくる巨大な牛のような影があった。
「ブッモモモモモ・・・・」
叫び声と同時に巨大な斧を投げてきた。
「来れ,雷凰」
鳳仙が式神雷凰を呼ぶ。雷を纏う巨大な鷲が現れ,稲妻を放つ。
飛んでくる巨大な斧と稲妻がぶつかり,爆発を引き起こす。
爆発に巻き込まれ,牛の魔物は右腕を失う。聖炎の浄化の作用で全身が焼かれていても,構うことなく更に猛スピードで突っ込んでくる。
鳳仙は慌てずに自然体で雷凰に告げる。
「神雷」
幾千幾万もの雷の集合体が牛の姿の魔物に落ちていく。
雷が治まった後には何も残っていなかった。
銀の杭は光の柱を作り,五芒星は完成し,封印は完了した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます