第20話 学園見学会①
今日はアリステレス学園の見学会。校庭には100名ほどの人が来ている。
自分一人で十分だと言ったのに、何故か一家総出で学園に来る羽目になった。
爺ちゃん、婆ちゃん、父さん、母さん、自分の計5人。
ただの学校見学だからと言ったら、全員から猛抗議。
『『・・孫の通う学園を見るのは当然の権利・・・・』』
『『・・息子の通う学園をしっかり確認するのは当たり前・・・』』
正直、勘弁してほしい。
ただでさえ、爺ちゃん、婆ちゃんは陰陽師界では色んな意味で有名人。
そんな人がお上りさん状態で大声で喋る。
他の参加者の視線が痛い。
『・・・おい、あれは破壊神善一郎じゃないか・・・』
『・・・その隣は、その破壊神を従える絶対者沙織・・・』
『・・・破壊神て、確か昔、国会議事堂を半壊させたと聞いたぞ・・・』
『・・・いや、俺は島を丸ごと消滅させ、海の藻屑にしたと聞いたぞ・・・』
『・・・私は、樹海で大火災を起こし、周辺の街々を焼き払ったと聞いたは、そのあとは地面がドロドロのマグマのようだったと・・・』
『・・・そんな破壊神を顎で使う絶対者沙織・・・何者・・・』
他の参加者のヒソヒソ声が聞こえてくる。
もう帰りたい。本当に帰りたい。
破壊神に絶対者。二人は何をすればそんな呼び名が付くんだ。
人混みの中をこちらに近づいてくる人がいる。
「やあ、沙織さん、良宣君、久しぶりだね。麗奈の件は世話になった。ありがとう」
道摩玄星さんがそう言って頭を下げた。
その後ろには、道摩流星さんと麗奈さんがいた。
二人も玄星さんと一緒に頭を下げている。
「玄星、頭を上げておくれ、人目がある」
「すまん。何かあればいつでも言ってくれ、いつでも力を貸そう」
その様子を見ていた周囲の人は
『・・・絶対に人に頭を下げない。殲滅者と呼ばれるあの道摩玄星が頭を下げているぞ・・・』
『・・・絶対者沙織は、道摩玄星にも影響力があるのか・・・』
周囲のヒソヒソ声が聞こえてくる。
「は〜い、皆様ご静粛に!」
声の方を向くとそこにはメイド服姿の校長フレイヤがにこやかな笑顔で立っていた。
メイド服の姿はどう見ても20歳ほどにしか見えない。
「ではこれより見学会を開催したいと思います。数名ずつ案内係が着きますので、案内係から
呼ばれたらその人のとこに行ってください。案内係の方お願いします」
校長フレイヤの後ろから職員たちが出てきた。
職員たちは各々間隔をとって広がり見学者たちの名前を呼び始める。
「くだらねえ!俺たちはメイドのお姉さんといいことしたいね〜」
五人のちょっと粋がった男たちがフレイヤに近づいていく。
「邪魔だどけや!」
周辺の人たちを突き飛ばしていく。
「ホ〜!勇者がおるの〜。知らんと言うのは恐ろしいな」
善一郎の呟きに
「フッ・・全くだ。あれは陰陽師北家の馬鹿息子だな。少し初歩的な術が使えるからと天狗になって困ると親が嘆いていたな!しかし、よりによってフレイヤ殿に絡むとは、あいつら五体満足で帰れんぞ!」
道摩玄星は男たちの振る舞いに呆れていた。
男たちがフレイヤに手を伸ばしかけたその瞬間、突風が吹き男たちが吹き飛ばされる。
「お馬鹿なお子様には、お仕置きが必要ですね」
黒一色の西洋式の甲冑姿の人たちが地面から湧き出してきて男たちを取り囲む。
黒い甲冑の人達に囲まれた中、一人の男が式神を呼び出した。男の前に身の丈2mほどの黒い鬼が現れた。
「おいつを攻撃しろ」
鬼に命じると、鬼は男が指差す方を見た。
鬼がフレイヤを見た瞬間、動きが止まった。
「どうした、早くやれ!行け!どうした!!!」
鬼は、いきなりフレイヤに向かって・・・・・・・・・土下座した。
呆気にとられる男たち。
「フフフ・・・この鬼は主と違い、相手の力量をしっかりわかるようですね」
しばらく、思案顔をしていたが
「いいでしょう・・・この馬鹿主との契約を破棄して帰りなさい。そうすれば許してあげましょう。それができななら・・・・・」
鬼は、全力で首を縦に振る。何度も何度も。
そして鬼は姿を消した。
「やれやれ、相手の力量もわからず喧嘩を売り、式神にも逃げられるとは・・・」
道摩玄星さんが呆れたように呟く。
「大した力もないくせに粋がったツケじゃな」
爺ちゃんの玖珂善一郎も呆れたように呟く。
「・・・なんだと、このクソジジイども!」
「ホ〜!この道摩玄星をクソジジと呼ぶか!」
右手から赤い炎が燃え上がる
「この玖珂善一郎をクソジジ呼ばわりするか!いい度胸しとるな!」
全身からいく筋もの小さな稲妻が迸る。
五人のうちの一人が驚いた顔をする
「エッ・・・破壊神と殲滅者・・・・・不味い・・」
「ふざけやがって・・・」
「待て、相手がやばい・・やばい・・マジでやばい・これ以上は・・・」
仲間が式神に逃げられた男を後ろから抑える。
「善一郎殿、玄星殿、これは私の獲物ですから横取りはいけませんよ」
男たちを取り囲む圧力が強まる。
そこに男たちの親と思しき者たちが飛び込んできた。
そして、全員が土下座をした。
「「「「「申し訳ございません。フレイヤ様、善一郎様、玄星様どうかお許しください」」」」」
必死に土下座をして許しを乞う。
冷めた目のフレイヤは
「あなたちが甘やし続けた行いが、今の状態を作ったのではないですか、どう落とし前をつけるのです
か???」
「しっかりと教育を・・・」
「時間の無駄ですね。ちっぽけな力に酔いしれ、相手の力量もわからずに喧嘩を売る。陰陽師失格ですね。今回の見学者には、この子たちよりも圧倒的な強者が何人もいます。こんな愚か者にかける時間が勿体無い。一度、三途の川を見せた方がよほど教育になりますよ。流石に三途の川を渡らせるわけにはいきませんが・・・と言うことで三途の川の見学ツアーをしましょうか」
この言葉に顔を引き攣らせる一同。
「流石に三途の川を・・・」
「そうじゃ、三途の川は流石に・・・」
「三途の川を渡れとは言ってません。見てこいと言っているだけです。見てくるだけ!!!見てくると劇的に人が変わると思いますから!それに、善一郎殿と玄星殿のお二人も在学中にいろいろ問題を起こして、私と何度も何度も三途の川の見学ツアーをしましたよね!とても素晴らしく人生が変ったでしょ!」
ニコニコ顔で話すフレイヤ。
「「・・・あ・あ・あれは流石に・・酷いというか・・・非道と・・・」」
昔を思い出し顔を引き攣らせる二人。
「フレイヤ。流石にそれは行き過ぎだ。陰陽師協会の教育更生対象に指定して協会で矯正させるしかないだろうね」
ばあちゃんの言葉に、フレイヤは仕方ないという表情。
「仕方ありませんね。沙織さんの顔を立てその言葉を受け入れましょう。学園に来ている陰陽師協会役員に引き渡します。それが最大限の譲歩です。それが納得できななら今度こそ手加減しませんよ」
親たちは全力で首を縦振っていた。
男たちは陰陽師協会役員に連れて行かれた。
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